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とある○○の○○○○ その3

生きてる。
アケゲとかに散財してるけどまだ生きてる。

( ^ω^)ニコッ

( ^ω^)系の更新じゃないけど気にするな。
――彼は知っている。
世界は不条理に満ちている事を。
この学園都市ではそれが殊更である事を。

――彼はその事実を知っていた。
この学園都市に於ける名実共に第一位であるが故に。
不条理に押し潰された者達の羨望と嫉妬を、一身に受け続けたが故に。

――彼はずっと前から気付いていた。
最強と呼ばれ続けていた自身の心は、その輝かしい称号とは裏腹にとても弱いと云う事を。
自分自身の攻撃的な性格はその実虚勢でしかなく、臆病さの裏返しだと云う事を。

――彼は気付けなかった。
永き間、ずっと孤独だったから。
実験対象に愛情を向ける人間など、一人もいなかったから。

――彼は、弱かった。
最強でありながら、無能力者(レベル0)に負けてしまうほどに。
自身に向けられた愛情から、目を背けてしまうほどに。

――だから、だろう。
彼は、逃げ出した。自身の本心さえも受け入れきれずに。
楽な道を、選んでしまった。


             モヤシ  オナリューション
――――とある豆芽の手淫進化――――



――学園都市に存在する、窓の無いビル。
その屋上で、一人の少年が膝を抱えて座りこんでいた。

幼さの残る顔に表情はなく、その肌の白さと相まってマネキンを思わせる。
目の焦点は定まっておらず、呆然とした視線は前へと向けられているものの、何も捉えてはいない。

「……大した事ァねェ。ただ、昔の生活に戻るだけだ……」

抑揚のない声での呟き。
それと共に少年の脳裏に過ぎったのは、無機質な、真っ黒い部屋。
玄関を開けても料理の匂いなど漂ってこない、ただいまもおかえりも存在しない、過去の自身が存在していた場所。

それは、少年にとっての孤独の象徴。
それは、今の少年にとって死よりも恐ろしい、恐怖の象徴だった。

「カカッ…………こンな精神状態でも、関係無しってェ訳か」

余計な事まで脳裏を過ぎり、思わず勃起した少年の名は一方通行。
最強と云うハリボテのない彼は、どこにでもいる、弱い、独りの人間であった。



                   オナリューション
――――#Last 手 淫 進 化 ―――― 




――部屋、と呼ぶには余りに広大な空間を満たすのは、数にして数万にも及ぶ機械類。
そこから伸びる数十万にも上るコード、ケーブル、チューブは血管の様に床を這い、その空間の中央へと集約される。

部屋の中央に存在するのは、赤い液体が満たされ、所々に白くねばつくなにかが浮遊する巨大なビーカー。
そんな生理的嫌悪感を催すビーカーの中には、緑色の手術衣を着た人間が逆さに浮いていた。

それは『人間』と表現するより他なかった。
銀色の髪を持つ『人間』はショタにも男の娘にも見えて、ロリにも貧乳にも見えて、童貞にもヤリチンにも見えた。
『童貞』としてあらゆる可能性を手に入れたか、『ヤリチン』としてあらゆる可能性を捨てたか。
どちらにしても、それは『人間』以外に表現する言葉がなかった。

「ふぅ……どうせ最初から見てたのだろう、出て来たらどうだ?」

ビーカーの中に浮かぶ『人間』は、自身の眼前、何もない空間に問いかける。
まるで、誰かが其処にいるかのように。

「……」

「……」

「……いる、のだろう?」

『人間』が再び問いかけたのは、最初の問いかけから一分ほど後。
その一分の間に、『人間』は答えが帰ってこない事について、幾つかの可能性を考えた。

――故に。一分と云う、長い思考時間を与えられたが故に。
存在しない者を呼んでしまったのでは、という可能性が浮かんでしまったが故に。
『人間』は、その常人よりも幾許か艶を帯びた顔、その頬を少しばかり紅く染めた。

「ほう、君にも感情があった……いや、残っていたか。と言う方がこの場合正しいかな」

「ッ!?」

――直後。
再度の問いかけに応えるように、全身を淡く輝かせる存在がビーカーの前に現れた。

「まさか、君(アレイスター)に“萌え”を覚える日が来るとはね。これでは結標を笑う事など出来ないな」

薄ら笑いを浮かべ、声を出さずに笑うその存在は、人の身姿に似ていながら、人とはかけ離れていた。
存在の密度が。醸し出す雰囲気が。その身から漂わす体臭が。その鼻腔からはみ出す鼻毛の量が。
それは『人間』と酷似していながら、『人間』とは最も離れた存在だった。

アレイスター「……エイワス。君は些か余計な知識を取り入れ過ぎている気がするのだが」

エイワス「君がそんな些細な事を気にするとはね……そんな事より、そろそろ始まるのではないか?」

アレイスター。と称されたビーカーの中の『人間』をよそに、エイワス。と称された存在は楽しそうに、目を細めながら言葉を更に紡ぐ。
相対するアレイスターは何を言っても無駄、と悟っているのか口を噤み、小言を押し殺す。

エイワス「ああ、楽しみだ。彼が今日と云う日を以って、位階を上る」

アレイスター「それを以って、彼は絶対能力者(レベル6)となる、か。楽しみだ」

言葉と共に、アレイスターの唇が弧を描く。
無理もないだろう。プランを予定通り進める為とはいえ、一度はその可能性を摘み取ったのだ。
その可能性が再度芽吹く、と云う事実はアレイスターに笑みを浮かばせるだけの価値があった。

が――

エイワス「否。彼は絶対能力者、などという存在すらも塵芥に感じられる存在へと化す」

アレイスター「なっ……」

――直後、エイワスはアレイスターを絶句させるほどの言葉を紡いだ。

エイワス「昇華された彼の存在は、言うなれば――――絶倫能力者(レベルSEX)」

アレイスター「 」

エイワス「人の三大欲求を能力の内に取り込む事により、彼は私すらも殺し得る力を得る。ああ、人の可能性がここまでとは、な」

アレイスター「 」

エイワスの語る内容は、アレイスターを絶句させるに充分な衝撃を与える。
『人間』は、『人間』であるが故に『人間』を舐めていた。
『人間』であるからこそ、『人間』の限界を勝手に決めていた。

だからこそ、アレイスターは、見誤ってしまった。
人間の可能性を。

エイワス「……始まるな」

絶句し、思考を放棄したアレイスターをよそに、言葉を紡ぎながら、エイワスは天を仰ぐ。
視線の先で座する、未来の絶倫能力者を仰ぎ見るかのように。

エイワス「しかし残念だ。今日が棚卸しで無ければ、特等席で見れたのだがね」

エイワスが満面の笑みを浮かべると同時に、その存在の姿は掻き消える。
アレイスターがそれに気付いたのは、それより数秒後、この空間――――窓の無いビル全体が揺れる衝撃によってだった。




――時は、少しだけ遡る。

時間は午後を幾らか過ぎた辺り。
場所は、札を吸い込む四角い悪魔の存在する公園。

休日であるというのに、その公園には人の声はなく。
日はまだ高きにあるというのに、子供達が遊ぶ姿はない。

そんな公園のベンチには、隣り合って座る二人の人物。
一人は真紅の髪を肩ほどまで伸ばし、右目の下にバーコードのタトゥーを入れた長身の男。
もう一人は、桃色の髪色をした、中学に入学するかどうかといった年頃の少女。

「……」

「……」

二人は互いに相手に一瞬視線を動かし、視線が重なると同時に俯く。という動作をかれこれ数十回ほど繰り返していた。
その仕草には、どこか初々しさが感じられ、二人の知り合いならばふふ、と微笑むものであろう。

が、訳知らぬ者が見たなら、眉を潜める光景であろう。
赤髪の不審者がこの場所に人払いの結界を張っていなければ、今頃は警備員に囲まれていたに違いない。

「で、コモエ。インデックスを介してまで僕を呼び出した理由は……一体何だい」

俯いたまま、赤髪の不審者は少女に問いかける。
その表情にあるのは困惑、そして僅かばかりの畏怖。

しかし、コモエと呼ばれた少女はそんな表情に笑顔を返す。
人間としての器の差が如実に現れた瞬間であった。

小萌「今日はですね、こちらを神父さんに」

「神父さんというのは止めてくれ。僕にはステイル=マグヌスという名前があるんだ」

小萌「そうでしたね。今日はですね、先生はステイルちゃんにこの本を返しておこうと思ったんですよー」

ステイル「…………まさか、こんなにも早く返ってくるなんて」

小萌が差し出した本を震える両の手で受け取りながら、ステイルは両の目を潤ませる。
そして、永く離れていた恋人と再会したかのように、本の表紙の女の子と見つめ合う。
更には、愛おしき人を抱きしめるように、本をその胸に掻き抱いた。

――ステイルがこの様な行為に走ってしまうのも、無理の無い事かもしれない。
その本は、コミックLOは、すているさんじゅうよんさいが一度は手にし、理不尽な理由から没収されてしまった代物なのだから。

ステイル「……取り返そうなんてしたら、僕はすぐさまにでも逃げるからな」

小萌「そんな事はしませんよー。先生は約束を破ったりは嫌いなんですからー」

本を懐にしまいこむステイルを眺めながら、小萌は自身の教え子を眺める時と同じように頬を緩ませる。
見た目とは裏腹にかなりの歳を重ねている彼女にとってみれば、見た目はどうであれ十代の子供は可愛くて仕方がないのだ。

ステイル「……そうかい」

小萌「はい。それじゃあ、先生はコレで」

ステイル「……理由は?」

不意に、ステイルが尋ねた。

それが、余りに唐突だったから。
目的を達成した安堵で気が緩んでいたから。
ステイルの声色が、余りに真剣だったから。

ステイル「君が自身の発言を取り消してまで、コレを返そうとした理由を尋ねているんだ」

小萌「……」

小萌は、表情を強張らせ、笑顔の下に隠していた表情が、露となった。
どうにか取り繕わんと小萌は口をモゴモゴさせるが、出てくる言葉は要領を得ない。

ステイル「…………どうやら厄介事みたいだね」

小萌「ッ!?」

ステイル「微力ながら、僕も助力させてもらう事にするよ」

ステイルと話す小萌は、僅かに震えていた。
何かを押し殺していた。何かを覚悟していた。それなのに、笑っていた。
その姿が、過去の、記憶を殺される直前の、ステイル=マグヌスが殺し続けてきたインデックスを思い起こさせたのだ。

小萌「……ダメです。これは、学園都市の問題なんです」

返答は――押し殺した、絞り出すような声で吐かれたのは、拒絶の意思。
ステイルの申し出は、小萌の教師としての矜持に逆らうもの。
だからこそ、受け入れる事が出来なかった。

ステイル「それなら尚更だ。インデックスがこの街にいる。それだけで命を賭ける理由は十分すぎる」

小萌「…………死ぬかもしれない、としても?」

ステイル「愚問だね。僕は、彼女の為に生き、彼女の為に死ぬ。ずっと昔にそう決めたんだ」

小萌「……そう、ですか。シスターちゃんは愛されているのですね」

しかし、ステイルの魂に刻んだ誓いを前に、彼女は諦めたような笑みを浮かべた。
ステイルの想いが小萌の思いより強かったという訳ではない。

――逃がす事が叶わないのであれば、自分が守る。命を賭けて。
この学園都市230万人の生徒達と一緒に、ステイルも全力で守る。
ただ、それだけだ。月詠小萌がやる事に何も変更などないのだ。

小萌「ねえ、ステイルちゃん――――煙草、貰えますか?」

ステイル「いいけど……その代わり、僕が付き合うのは大目に見てもらうよ」

小萌「むふー、仕方ないですねー」

小萌は少しだけ意地の悪い笑みを浮かべつつ、ステイルより煙草を受け取る。
その煙草には何らかの魔術が施されていたのか、小萌が咥えると同時に先端に火が点った。

ステイルが煙草を咥えるのを横目に、小萌は紫煙を深く吸い込む。
そして立ち上がり、二歩、三歩と足を進めながら紫煙を空へと吐き出した後、

小萌「どうせばれるでしょうから――――先に見せておきますね」

いつもの天真爛漫な表情とは違う、歳相応と言うには余りにも達観した表情と声色で、月詠小萌はそう告げた。

ステイル「一体、」

――直後。
ステイルが、言葉の意味を問うよりも先に。
小萌の身体に変化が現れた。

ステイル「――――ッ!?」

小萌の肌に幾条もの閃光が走り、淡く輝く軌跡を残す。
閃光が描くのは、月光の色の燐光を放つ、緻密な幾何学的紋様。
それは、月詠小萌というキャンパスに描かれる魔法陣。

ステイル「これは、夢、ではないのか……」

ステイルの背を、冷や汗が伝う。
彼が覚えた感覚は、原典を前にした時に感じたものと似ていた。自動書記と相対した時のものと似ていた。
似てはいたが――眼前の、月詠小萌という存在の威圧は、そんな生易しいものではなかった。

ステイルがそう感じるのも無理はないだろう。
彼の眼前にて覚醒しているのは、日本における最上位の三柱が一柱『月読』の模造品。
模造品とは言え、天使に勝るとも劣らぬ力を誇っているのだから。

小萌「……」

ステイルの表情の変化を感じ取ったのか、小萌は背を向けたまま、何かを堪えるように天を仰ぎ、口を強く噤む。
しかし、自身の変化を止めようとはしない。

存在は人を超えていながらも、その精神は、心は、魂は悲しいほどに人間であったから。
戦場で、親しみを感じた相手から恐れの視線を向けられて尚、冷静でいられるほど強くはなかったから。

だから、彼女は敢えてこの場でその力を見せた。
ステイルが、恐れ戦いて逃げる事すら仕方ないと思った。

それでも、月詠小萌は期待してしまった。
無愛想で、ぶっきらぼうだけど、心優しい少年が受け入れてくれるという奇跡を願ってしまったのだ。


――そして、閃光が止んだ。


小萌「……これが、私。先代学園都市守護者『屠殺系科学少女モエキュンキュン』」

月詠小萌は振り返る事無くそう告げた。
硬質な、少女のような外見にそぐわぬ声で。

彼女は返事を待つ。
背を向けたままで。

そのまま、十数秒経った頃だろうか。

ステイル「………凄いな。笑いしか出てこないよ」

辛うじて小萌に届く大きさのステイルの声に恐怖の色はなく、ただただ驚きに満ちていた。
それ故――

小萌「ふふっ、凄いでしょう。伊達に1200年以上生きてませんからね」

――振り返った月詠小萌の表情が、満面の笑みであった事は必然であろう。





――その日、学園都市は朝から妙な雰囲気に包まれていた。
何時もと変わらぬ光景の中に、異質が紛れ込んでいるような違和感を、誰しもが覚えていた。
しかし、誰もその事について口にしようとはしなかった。

その違和感が余りに漠然としていたから。

視界に映っているのに、それに気付けないような感覚。
見えていながら、知覚出来ないという矛盾。
知覚出来ぬが故に、その違和感は記憶の端に捨て置かれる事となる。

まあいいか。という言葉と共に。

それが魔術という、この都市に住まう者にとって未知の法則によってもたらされているという事実。
それを語った所で、この都市に住まう者は一笑に付すだろう。

ありえない。という言葉と共に。

統括理事会勅令の緊急召集に応じた警備員の一人、

「んー…………はーい、こっちは立ち入り禁止だから悪いけどそっちでUターンするじゃんよー」

黄泉川愛穂もまた、その一人であった。

黄泉川「にしても、いきなり区画閉鎖たぁ……鉄装、お前何か聞いてないじゃん?」

鉄装「いいえ。皆さん色々と噂してるみたいですけど、確信持ってる人はいないみたいですね」

黄泉川「そっか……統括理事会は一体何考えてるじゃんよ」

黄泉川愛穂の視線の先には、統括理事がいると噂される窓のないビル。
その視線の先に一方通行がいる事に彼女は気付いていない。

そもそも、早朝に呼び出され慌てふためきながら家を飛び出した彼女は、一方通行が行方を晦ました事に気付いていない。
まぁ、気付いていたとしても、彼女が自身の立場を忘れ、一方通行を探す為に奔走するという事無いだろう。
この区画閉鎖が、一報通行から住民を隔離する為だという事実を彼女が知る由などないのだから。

――過ぎたる過去の話ではあるが。もしも、という話ではあるが。
前日の黄泉川愛穂の酩酊具合が、幾許か理性を保ったものであったならば。
抱擁という行為が、少年を赦す言葉を伴っていたならば。

今頃二人は、顔を見合わせると共に引き攣った笑いを浮かべながらも、何時もと変わらぬ日常を送れていただろう。

しかし、その光景は今となっては幻想でしかない。
当人が気付かぬままに未来は確定されてしまったのだから。


――――


警備員が閉鎖する区域の内で、文字通り暗躍する者達がいた。
ある者は一定の間隔で小石を撒き、またある者は自販機の横に、街路樹の根元にとあらゆる所にチョークで記号を記していく。
それらは通常であれば清掃ロボットによって撤去され、清掃されてしまうもの。

だが、今この時、学園都市に於いてこの区画だけはあらゆる機械が動きを止めていた。
故に、彼らは阻む者の無いこの場所で、己に課せられた役目を黙々と果たしていく。

『こちら牛深。式の第一節完了した』

『こちら対馬。第三から第七に掛けての術式接続確認完了』

『こちら香焼。え、エロ本拾ったっすけど持って帰ってもいいっすよね?』

暗躍するは、魔術集団『天草式十字凄教』
彼らが造るは、学園都市に住まう者が覚えていた違和感の正体。
大規模な、一歩間違えば学園都市を消滅させる強力な術式の魔法陣。

それを指揮するは、

「こちら土御門。牛深は野母崎と共に補助術式の構築を、対馬は諫早の構築式の再確認を。香焼は後で風俗奢ってやるからそれはポイしなさい」

金髪にサングラス、そして前を開けたアロハシャツという不良といっても差し支えない少年。
名を土御門元春。この様な身なりではあるが、歳若くして陰陽博士の称号を得たほどの者である。

土御門「…………で、建宮。何か言いたそうだがどうかしたか」

言葉と共に振り向く土御門の視線の先には、髪を乾かさずに寝てしまったような髪型の、首に紐に連ねた小型扇風機を下げた男。
男の顔には、苦虫を噛み潰したような、憮然とした表情。

男の名は建宮斎字。
この様な残念な成りではあるが、天草式十字凄教の教皇代理である。
あくまで代理であるが。

建宮「なぁ、土御門」

土御門「……なんだ」

互いに、硬いものを呑んだような声。
一歩間違えば、そのまま殺し合いを始めかねないような声色。

建宮「俺も……エロ本拾ったら風俗奢ってもらえるのよな?」

土御門「そんな事しなくても、成功すりゃあ学園都市から報酬出るからそれでいけばいいぜい」

建宮「……」

土御門「……」

建宮「…………そう、か。ならばよいのよな」

僅かばかりの沈黙の後、建宮は心底安堵したかのような溜息を吐きながら頷いた。

土御門「それだけ、かにゃー?」

建宮「……我らは償わねばならぬ身。我らが信念にそぐわぬ事で無いのなら黙って従うのよな」

土御門「……」

言葉は、償いは土御門に向けられたものではない。
それを土御門は十二分に理解している。

それでも、土御門はそれを利用した。
彼ら天草式十字凄教だけではなく、警備員、自身の担任である月詠小萌、そして、親友である上条当麻でさえも。
彼にも、全てを犠牲にしてでも守りたい存在がこの学園都市に在るから。

だからこそ、土御門は今この時構築させている魔法陣を、防御術式であると偽った。
天草式十字凄教の者達に気付かれぬよう、配置、割り当てに細心の注意を払って。
人としての良心があるならば、この様な術式が日本にある事自体に嫌悪感を覚えるであろうから。

土御門「そうか……なら、ちぃーっとばっかし暴走して変な術式組み始めてる五和のとこにいってもらうぜい」

建宮「げぇっ!?」

だからこそ、土御門は自身の心さえも殺す。全てが終わった時、全ての責を自身が背負う覚悟さえもって。
頭頂にそそり立つ、屠殺系科学少女モエキュンキュンの相棒の証、二本の耳を揺らしながら。





――彼は、全てを失った。
金も権力も立場も。心も意思も夢も希望も目標も矜持も悪意も敵意も最低限の権利さえも。
全てを失った果てに、人とは呼べぬ機械の一部にまで成り下がった。

それなのに。

それなのに、彼はそこにいた。
全てを奪われたままに、人として蘇った。

全てを失ったが故に。

全てを失ったが故に、彼は手に入れた。
新たな可能性、というかけがえのないものを。

そんな彼は今この時――

「……はぁ」

――何の因果か、正座のまま溜息を吐いていた。
彼が座す場所は、とあるマンションの一室。生足にフローリングは少々辛いか、少年はぶるり、と身を振るわせた後、

「なぁ、芳川さんよ……服、返してもらえねえか。それ、俺の一張羅なんだが」

と、備え付けのベッドに座ったまま自身を舐る様な視線で見つめる、眠たげな眼の気だるげな雰囲気を纏う女性に問い掛けた。
それに対し彼女は、

芳川「それって、ここで脱げって事かしら。それとも垣根君、貴方が脱がしたいの?」

挑発するように囁きながら、底意地の悪い笑みを浮かべ、更にはスカートの中がギリギリ見えぬ加減で足を組み替える。

垣根「……どうしてこうなった」

垣根と呼ばれた女性用下着一枚の青年は心からそう呟いた。
常盤台の制服に身を包んだ芳川桔梗の太股の付け根を凝視しながら。

――どうしてこうなったかと問われたならば、不幸が重なったとしか答え様が無いだろう。

つい何時ものクセで着衣をそこらに脱ぎ捨て、下着一枚で寝てしまった垣根帝督。
時を同じくして、私物を全て処分した上で失踪した一方通行。
新作の本を潜ませようと、一方通行の部屋の扉を開けた芳川桔梗。

それだけならば、問題は無かった。
幾ら火薬があろうとも、火の気が無ければ爆発は起きないのだから。

しかし、この時の芳川桔梗は炎となりうる危うさを秘めていた。
数日前の彼女であれば、幾らかの洒落を盛り見ながらも、大人の対応を取る事が出来ていただろう。
だが、その数日の間に、彼女は心に大きな心の傷を負ってしまっていた。


――それは、芳川桔梗が打ち止めを連れて買い物に出かけた時の事だった。


『あれ、桔梗さんじゃないですか』

彼女が買い物先のスーパーで出会ったのは、絶対能力進化実験より昔に、共にプロジェクトを進めた元同僚の男性。
苦楽を共にし続けたからであろう、朴念仁と称された事さえある芳川桔梗がここ数年でただ一度、男女としての好意を抱いた存在。

そんな相手との、偶然の再会。
そんなありふれた偶然は、科学者であった芳川桔梗に運命という言葉を胸に抱かせた。

『久しぶりですね。えっと、五年振りですっけ?』

色恋を知らぬ同居人共を焚きつけていたせいもあるだろう。
黄泉川愛穂の初々しさに、自身にもこの様な時代があったと思い出してしまったせいでもあるだろう。

これは、フラグではあるまいか。
偶然という名の再会フラグからの、恋愛フラグではあるまいか。
遅咲きの恋の予感に、芳川桔梗(年齢非公開)は初心な乙女のようにときめいてしまった。


が――


『あれ、もしかして』


その幻想は、


『桔梗さんって結婚していたんですね。娘さんはお父さん似かな?』


いとも容易く、砕かれた。


『あ、そういえばですね、俺もなんですよ』


それこそ木っ端微塵に。


『俺も、結婚したんです』


反撃の機会すら与えてもらえぬままに。


傷は、余りに深かった。
自分にも他人にも甘いと自負している芳川桔梗にとって、致命傷となりうる程に。
尻を浮かせた体勢で爆睡する垣根帝督と、脱ぎ捨てられた常盤台の制服を前にして、

『私だってまだいける』

知らずの内に、愛憎入り混じった声で、そう呟いてしまうほどに。


――その結果、

垣根「正直よ、すっげぇ寒いんだけど」

芳川「そう…………で、垣根君。私を見てどう思う?」

他人にも自分にも甘いという自負から、『他人』が抜け落ち、その分の甘さが自分へと回された。
芳川桔梗は、兎にも角にも自分に甘い駄目人間へと成り果てた。

垣根「どうって……正直、歳考え」

パァン

言葉は最後まで吐く事を許されなかった。
そして、頬を叩かれた。と垣根が思い至るより先に、質問は繰り返される。

芳川「で、垣根君。私もまだまだいけると思わない?」

垣根「いや、何かイメクラじょ」

パァンパァン

またしても、言葉は最後まで吐かれる事を許されなかった。

垣根「……じゃあ、何て言えってんだよ」

往復ビンタを受けた垣根の両頬には、紅葉の如き掌の跡。
芳川を睨むその目には、幾らかのイラつきと多大な戸惑い。

芳川「答えを強制しているつもりは無いわ。ただ、垣根君が 本 当 に 思 っ て い る 事 を聞きたいだけよ」

垣根「……ッ」

芳川の笑顔に、垣根は寒さとは違う悪寒を覚えた。
彼は知らぬ。彼は一度たりとて見た事はない。
ここまでの狂気を秘めた、人の心をへし折る笑顔など見た事はなかった。

芳川「それじゃあ垣根君。私と常盤台の制服という神コラボを見て貴方はどう思った?」

垣根「……俺の未元物質以上に、常識が通用しねぇと思いました」

それは、学園都市第二位『垣根帝督』の敗北宣言であった。

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ひちょりまちょめ

Author:ひちょりまちょめ
コテ酉無しです。
でも一話の最後見たらすぐ分かる仕様です。

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