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とある○○の○○○○ その4

(^ω^)クリスタルボーズprpr

――髪も肌も白く、一対の紅い瞳をもつ少年。
少年は、自分は全てを捨てた。自分には何も残されていないのだ。と自身の心に言い聞かせ続けた。

少年は近しき者を汚す事を恐れた。
暗い赤と白濁に塗れた手で触れていた事を、心底後悔していた。

少年は気付いてしまった。
自身が何かの拍子で力を行使すれば、人は容易く壊れる事を。
性欲が理性を侵し、その末に凌駕する事を。

少年は想像してしまった。連想してしまった。重ねてしまった。
自身が屠った一万を超える妹達の死に様と、近しき者達の姿を。
自身が所持していたエロ本の、張り付いてしまったページを。

故に、少年は孤独を選んだ。
自身が壊れる方がマシだと思った。
だから、弱いままの自分でいられるあの場所から逃げ出した。

そして、行く当ても無いままさ迷い歩き、行き着いた場所が窓の無いビルの屋上。
それが明確な意思を持っての行動であったなら。明らかな敵意を持っての行動であったなら。
それならばアレイスターも納得し、全力で排除に掛かれただろう。

しかし、この時の一方通行に悪意など無く。
思考の半分を家族と呼べた者達への罪悪感で占め、残る半分を、

一方通行「……こンままだと、ちンちン爆発すンじゃねェか?」

未だ嘗て体験した事の無い、先端から汁が滴り落ちる程の勃起に注いでいた一方通行にとって、この場所を選んだのは偶然でしかなかった。

一方通行「どォせここなら誰も見てねェしなァ……」

一方通行は辺りを見回しながらベルトに手を掛け、その手は躊躇いを覚えたか、動きを止めた。
彼の脳裏を過ぎるのは、黄泉川愛穂に自慰行為を見られてしまったその瞬間。

一方通行「…………あァン?」

――近づいてくる、聞き覚えのある連続した風切音に気付いたのは、まさに紙一重。
もし、彼がそれに気付かづ自慰行為を始めていたならば。
その姿は丁度街の風景を撮影していたTV局のヘリよって、学園都市中にばら撒かれていただろう。

『学園都市第一位、下のサイズはレベル1』という不名誉なタイトルと共に。

一方通行「チッ……隠れてやり過ご――――ッ!!!!」

絶句と共に、一方通行の目が大きく見開かれる。
その視線はヘリよりももっと先、何も無い筈の空。

一方通行「……なンっつゥ悪夢だこりゃァ」

一方通行は見てしまった。
幻覚や錯覚の類であったとしても、彼の目はそれを確かに捉え、知覚した。

それは偶然か必然か。
その方向は、仇敵、

一方通行「化けて出たってかァ……木ィィィィ原クンよォォォォォ!」

彼が名を呼ぶ者が、文字通り消滅した方向。

彼は見たのだ。
空に浮かぶ、爽やかな笑みを湛えた木原数多を。

一方通行「オマエにだけは、ぜってェ見られる訳にはいかねェンだよォ!」

直後、一方通行の頭からヘリの事など消し飛んだ。
それだけではなく、並列して思考していた事柄が全て思考から除外された。

例外はただ二つ。
『おなにィをする』『天に浮かぶ木原数多に見られない』
その二つを同時に実行する為に、学園都市最高の頭脳はあらゆる可能性を模索し、

一方通行「――――あは」

弾き出された答えに満足したのだろうか。
学園都市最強は人を人と為す感情が欠落してしまったかの様な笑みを浮かべ、視線を足元へと向ける。
その視線の先にあるのは――

一方通行「は、はは、あは、か、くか」

――学園都市に於ける最高の科学技術。そして最強、且つ最凶と畏怖された魔術師の秘儀。
決して相容れぬ筈の、対極にある筈のその二つの融合によって生まれたのは、巨大な棺、とも称せる建造物。

一方通行は、視線を下へと向けたまま拳を振り上げる。
そして、地球の自転のベクトルを用いた一撃すらも受け止めきる強靭さを誇る巨大な棺の屋上で、翼と呼ぶには余りに規格外な黒翼を顕現させ、

一方通行「かかきかくかけかくかこかくかきけかこけけかー!」

抑揚のない笑い声と共に、一方通行の拳が振り降ろされた。
奇しくもそれは、エイワスがその直下の空間から消えると同時。

――その結果を奇跡と呼ぶべきか、それとも必然と呼ぶべきか。
それとも、矛と盾が衝突し、力の勝る方が被害を受けたのだから当然というべきであろうか。


――――


――窓の無いビル。その屋上に生まれたのは二本の黒色の柱。
直後、窓の無いビルはその高さの半分ほどを地に沈めた。

それを目にした者は、例外なく心に湧き上がる恐怖に身体を縛られる。
それなのに、取り乱すものはおらず、ただ一様に諦めに似た表情を浮かべていた。
本能が、理解したのだろう。余りに深い絶望に、発狂する事すら無駄であると。

それが翼である事など、誰も理解できはしない。

黒翼が最初に発現した時、それを目の当たりにした者の一人は星と化した。
二度目に発現した時、翼はコレほどの大きさなどなかった。
三度目の発現はこれに近い大きさを誇っていたが、それと相対した者は今病院のベッドで――

インデックス「とうまとうまー。お見舞いに…………とう、ま? あれ、とうまーどこにいったのー?」

――ただ一人、それが何であるかを完璧に理解した者がいた。
万全とは程遠い身体状態でありながら病院を抜け出し、翼の主を止めんとする者がいた。

「あの馬鹿……お前が選んだ未来ってのは、そんな事しなきゃなんねえ未来なのかよ」

手術衣のままで病院の裏口から抜け出す少年は、歯を軋ませる。
不幸に愛されるが故に、手術を再三延期にされてしまった少年は、尻に槍を挿したまま、ふらつきながらも遠方に映る二本の柱を睨み付ける。

「そんな事、ある筈ねぇよなあ。もしそうだとしても、俺は絶対に認めねぇ……」

独善に満たされた少年は歩き出す。
自身がヒーローである宿命を知らぬままに。
黒翼が顕現した理由を知らぬままに。

それと時を同じくして、

「ほああ……なんや、まさかアレがつっちーマル秘情報の奴かいな……」

青く染めた髪に両の耳朶にピアスという特徴の少年は、呆けたような顔を浮かべていた。

「まぁ、友達の為やさかい…………久々に命掛けてみよか」

が、その細い目に宿る光もその声色も、学友達の知らぬもの。
幾多の修羅場を潜った者のみが得うる凄みがあった。





――まるでウォーリーを見つけてしまったかのように、垣根帝督は情欲の権化と化した芳川桔梗を押しのけながら、窓の外の更に先へと目を向ける。
一区画以上離れた場所からでもハッキリと分かる、瓦礫を巻き上げる竜巻、そしてその中心より天を衝く一対の黒柱へと。

垣根「なぁ、ここは一時休戦といこうじゃねぇか……芳川さんよぉ、アレ、何だと思う?」

芳川「うふふ、垣根君の態度次第で教えてあげてもいいけど? ほら、腕の力抜いて」

垣根「おい、ちょっ、ダメだっっつぅの! 下に手を伸ばすんじゃねぇ!」

垣根の提案も質問も、今の芳川の耳には届かない。
その視覚も聴覚も触覚も、全てを垣根帝督――正しくはその瑞々しい肢体へと向けている芳川桔梗には、外の異変など届かない。

その指向性には些かの揺らぎも無く。
たとえ、唐突に扉が開かれ、

打ち止め「もー、さっきからうるさいよ! ってミサカはミサカは……」

まさかのR-18展開にたじろぐ打ち止めを以ってしても、

垣根「oh……」

打ち止め「えっと、この現場はまさかの昼ドラ展開!? ってミサカはミサカは生昼ドラに困惑と期待で胸一杯になってみたり!」

芳川「打ち止め、見ていいのは見られる覚悟が有る者だけよ」

その情欲は留まる事を知らない。
肉体も精神も全く揺らぐことはない。

芳川「分かるわよね、打ち止め?」

打ち止め「……(;^ω^)ニコッ」

芳川桔梗の言葉は、言霊と呼べる程の重みを持つ。
理など通じぬほどに幼き打ち止めに、理を魂に刻ませるほどに。

垣根「え……」

芳川「これで、邪魔者が入ってくる事は無いわね」

芳川桔梗の言葉は、垣根帝督の耳には届かない。
腕を絡められ、耳元で囁かれているにもかかわらず。
垣根帝督は、絡めとられて尚、閉じられた扉の向こうへと救いを求める視線を向けていた。

力など使える筈も無い。抗える筈も無い。
押し当てられる胸の感触は、今この時全身に覚える女性の体の柔らかさは、垣根帝督という童貞から抗う力を奪い去る毒を秘めていたのだから。

垣根「……好きにしろ」

芳川「……そう。でも好きにするのは全部終わってからじゃないと無理よね」

諦めを吐いた垣根に、その言葉の意味が通じただろうか。
全部終わってから。という意味を理解できただろうか。

芳川「ちょっと遅くなったけど、質問の答えを返すわね。アレは、一方通行の本来の力よ」

垣根「……おい、何を言ってやがる」

芳川「貴方、相対したのでしょう? アレを顕現した一方通行と」

垣根の耳元で囁かれた声は、欲に狂った声ではない。
科学者としての芳川桔梗の理知的な声。

垣根「……ッ」

その声に対し、垣根は余りに無防備すぎた。
故にその言葉は、垣根の頭に沁み、脳内にて記憶を蘇らせる。
アレを背中から生やした一方通行との死闘を。

芳川「ベクトル変換という能力は……アレの法則を科学によって捻じ曲げ、人に扱える程度抽出したに過ぎないわ」

垣根「……それを、何でお前が知っていやがる」

芳川「あの子の心を壊す事で枷を取り払い、アレを発現させる。それが私の関わった絶対能力者進化計画のプランB。
     その為の、二万体のクローン。あらゆる環境、あらゆるパターンの戦闘なんて只の名目に過ぎなかった。
     クローン達は学習した事を共有する。だから、殺す度に人間味を増した存在を相手にする事になるの。
     正直……一万三十一体のクローンを屠って尚、あの子の心が壊れなかった事は奇跡に等しいと思うわ」

とまでささやいて、芳川はふぅ、と溜息を吐く。
その吐息が届く先は、垣根の耳。

垣根「ひぃあっ……」

未知の感覚に垣根は身を捩じらせるが、足を絡めた芳川を除ける事など出来はしない。
それでも学園都市第二位の頭脳は、この状況に於いても芳川が五秒弱でささやいた言葉の意味の大凡を理解する程度には働いていた。

それが幸か不幸か、はさて置くとして。
今この時学園都市で起きている事、そして、コレから起こり得る最悪の事態を理解するには十分過ぎる情報。

垣根「やっ、らっ、らめぇ……」

耳を甘噛みされながらも、垣根は情報を整理する。
耳朶をはむはむされてなお、最悪の答えは導き出された。

垣根「つまっ、んんっ、アイツゥゥゥゥんん! ここっろぉぉぉぉん! ぶっこわぁぁぁぁぁぁおぅ!」

垣根は喘ぎながらも思い出す。
人とは呼べぬ、学園都市にとって有益な“機械”であった己を。
心無く、命ぜられるままに、アレイスターのにとって有益なものを吐き出し続ける存在であった己を。

心の壊れた後の世界はそれと同じだろう。
何も感じない。何が起きても動じない。信号の反射として、命令に只応じるだけの機械。
そこには何も無い。己が命令に従った後の結果が残るだけ。一方通行もそういう存在になろうとしている。

芳川「それを、防ぎたかった。だから、あの子に家族と―― 一人の異性を愛する事を知ってもらいたかった。心を強くする為に」

垣根「ハァ、ハァッ……んんっ、でもっ、やりすぎたぁぁぁああああぁん!」

芳川「ええ。正直エロ本の件はやりすぎたと思うわ」

――それを、今の己は許せるだろうか。
一昔前ならば、心が悪意に満ちていた頃ならば。
満面の笑みを浮かべたまま、ザマァねぇな、第一位。とでも吐いていた事だろう。

だが、知ってしまった。
アレは、アイツは、一方通行は化け物なんかじゃなかった。
自分もまた、化け物なんかじゃなかった。

互いに、どうしようもない事で笑えた。
心のままに笑うという事がどういうものなのか、ようやく思い出せた。

そして、気付いてしまった。
未来がこの手にあるという、生きているならば当たり前の事に。

垣根「ちょっ、ストッ…………ァっ、俺が、止める」

芳川「……」

少しの沈黙があった。
それを保ったまま、芳川はその身を垣根の上からするりと退ける。

垣根「……アイツにはでっけえ借りがあるみてえでな」

身を起こしながら、芳川から顔を背けて垣根は呟く。
立ち上がり、彼が向かう先は扉ではなく、遠い先に竜巻が覗える窓。

垣根「じゃあ、行かせて貰うぜ」

芳川「……終わったら、続きをしましょうね。貴方が望むなら一方通行と一緒でもいいわよ」

垣根の背に掛けられた声は、押し殺した声。
端々に窺えた感情は、情欲。

垣根帝督はそれを聞かなかった事にした。
理知的な芳川桔梗に胸をときめかせてしまったが故に。


―――――




杉谷「……任務、か。いい響きだ」

――命令一つで己はこうまで変わるものか。
大人の本屋Aiwss店員である杉谷は、紙袋を小脇に抱えそう思う。

身は自然と引き締まり、心は日本刀の切っ先の如き鋭さと冷たさを併せ持つ。
目的の為ならばいかなる事も許されるという、良心のタガを外す事による開放感。
その感覚はかつての杉谷が常としていたもの。一度覚えてしまえば二度と忘れる事は出来ない感覚。

平穏の中で錆びついてゆく事もまた由。と彼は退屈とさえ呼べる日々の中で考えていた。言い聞かせていた。
だが、やはり一度血を吸った刃はその味を二度と忘れる事など出来ないのだろう。

杉谷「しかし……オーナーも中々難儀な事を言ってくれるものだ」

その眼前にあるのは、巻き上がる粉塵によってその姿を下界から完全に閉ざした窓の無いビル。
二歩、たった二歩足を踏み出すだけで、その身は枯葉の様に舞い上がり、共に舞い上げられた瓦礫によって挽肉へと化すだろう。

瓦礫と暴風の結界を見据えたままで、杉谷は自身の使命を反芻する。

杉谷「……只の届け物で命の覚悟をせねばならん日が来るとはな」

表面は平静を装ってはいるものの、その目が、心臓の鼓動が、言葉よりも饒舌に彼の高揚を語る。
身体もまた全力を出せる事に喜びを覚えたか、熱を帯び、身に纏うスーツをその内より押し上げる。

杉谷「それもまた、一興か」

杉谷は笑う。
学園都市に訪れて初めてであろう、満面の笑みを浮かべたまま、その身を竜巻の中へと飛び込ませた。

彼は知らぬ。
その届け物がエロ本である事など。

だが、知っていたとしても彼はこの時笑っていたであろう。
心に刃を乗せるという事はそういう事なのだから。

決して任務放棄して職安に行こうとなどしない。
それが忍という生き方なのだから。


つづく








「ふふ、強すぎる力というのは不便なものだな一方通行」

そう呟きながら、人あらざる者は笑う。
声にした者より遥かに強い、まさに次元の違う力を持っているにもかかわらず、まるで他人事のように。

それは、声の主が人でないからこそのもの。
喩えるならば、恐ろしく強い、雀蜂すらも単体で屠る蟻がいたとしても、人は興味を示しても恐れは抱かない。
同種で無い存在の身になって考える事など、無理だと知っているからこそ。

「君はただ自慰をしようとしているだけかも知れない。しかし、たったそれだけの事すらこの学園都市は許容できないのだよ」

人あらざる者の言葉には憐れみがあった。
人間から逸脱した力を持ちながら、人間であろうとした者へと向ける憐憫が。

その存在は奇特な存在であった。
科学者に通じる、異常なる好奇心を持っていた。

そうでなければ気付きもしなければ、興味も抱かない。
そうでなければ人に神の摂理を教える筈も無い。

「我を通すか。それとも我を殺すか。どちらだとしても、君の未来に待っているのは地獄しかない」

彼は、気まぐれなる傍観者。
彼は、傍観者であるが故に、全ての事象を肯定するもの。

「足掻け。自身が叶わぬと思った夢が、未だその胸で燻り続けているのなら」

その声は、願いを叶える為の唯一の方法は、誰にも届かない。
届かぬと知っているからこそ、彼はその言葉を吐いたのであろうが。

「なるほど。天井を受けに回しつつも一方通行にへたれさせるか…………ううむ、地獄のミサカめ……追加発注確定だな」


――――


――まるで涙を堪えるように、魔術師達は顔を上へと向ける。
竜巻を目の当たりにして尚、魔術師達は声一つ上げなかった。
それが、始まりの合図だと知っていたから。

彼らが造ったのは、古き世より伝わる呪術の陣。
災厄の流れを歪め、一点に集約するその陣の詳細を知らぬままに、魔術師達は造り上げた。

小萌「――終わったら、皆で焼肉でも食べに行きましょうね」

風吹く音の中で、月詠小萌の声は魔術師達の耳に正しく届いた。
その言葉に、苦笑を浮かべる者もいれば、焼肉の脂をビールで流す感触を思い出し、喉を鳴らす者もいた。

土御門「……」

ステイル「……」

だが、土御門元春。そしてステイル=マグヌスだけは、沈黙を保っていた。

土御門元春は全てを知っている。
ステイル=マグヌスは月詠小萌との対話で察してしまった。
故に、笑える筈も無かった。

明るく焼肉を食べに行こうと言った彼女が死ぬかもしれないのだから。

知らせぬ事は、罪悪を背負わせぬ為。
知れば、後悔する。
知れば、この状況であっても別の手を考えようとする。

彼らは、天草式十字凄教の者達はそういう人間なのだ。

だからこそ、土御門元春と月詠小萌は敢えて告げなかった。
人の身を以って災厄を鎮める『人柱』という忌むべき術式の行使という責を自身らが背負う為に。

自身の声で魔術師達の緊張が解れたのを察したか、彼女は陣の一点――生贄の立つ場所へと足を踏み入れ、

小萌「では――」

土御門「ちょーっと待つにゃー。あと五分、いや、あと十分くらい待って欲しいかにゃー」

小萌「十分、ですか。じゃあ、五本吸うくらいの時間はありますね」

携帯電話を耳に当てた土御門の静止の声に、月詠小萌は全身から力を抜き、ふう、と息を吐きながらポケットから煙草を取り出す。
そして咥えた煙草に火を点しながら、

小萌「……イレギュラーですか?」

土御門「いんや、切り札のおでましだぜい」

言葉と共に、土御門の顔に笑みが浮かぶ。
が、その目に在るは苦渋の感情。

小萌「ああ…………今更ながら……教師、失格ですね」

そう呟く月詠小萌の顔には自嘲。
気付かない訳が無い。気付かない振りなど出来る筈が無い。

それでも、止める事が出来ない。
力はあれども、彼女は万能とは程遠いのだから。
土御門元春の告げる切り札がなければ、アレを止める事など出来ないのだから。

どれほどの痛みを心に受けたか、月詠小萌の眼から涙が一滴頬を伝う。
その傍らで、

ステイル「十分か……いけるな」

建宮「ちょぉぉっ!?マントにもぐってなぁにやろうとしてんのよな!」

ステイル「ちゅぱ……ちゅぱ……」

建宮「おぉぉぉぉまえさんはぁぁぁなぁぁぁにやっとんのよなぁ!」

ステイル「ガリッ」

どれほどの痛みを棒に受けたか、ルーンを極めた魔術師が戦闘不能となった。



――まるで天を仰ぐように、警備員達はビルの隙間から見える黒翼へと視線を向けた。
ざわめきは、伝播する。人から人へと、爆発的に。それを目の当たりにした者が幾人もいたが故に。

黄泉川「なん、で」

目を見開いた黄泉川愛穂もまたその一人。
生死を分かつ状況で、失血による意識混濁の中だからこそ強く目に焼きついたその翼が、再度、その視線の先で顕現するという事の意味。

瞳孔が絞られると共に、きゅう、と音がしたような気がした。

黄泉川愛穂は白い少年を知っている。
十全に知り尽くしているとまでは行かないまでも、彼の強さも弱さも知り、その上で、家族よりも近しい者に抱く感情を仄かにながら抱いていた。

速まる胸の鼓動が自身を追い立てるような、そんな感覚を覚えた。

黄泉川「どう、して」

だからこそ、立ち尽くす。
あの少年が。不器用な優しさに満ちたあの少年が、再び力を振りかざす事など微塵も想像していなかったから。
あの少年には明るい未来が待っていると、心の底から信じていたからこそ。

心の中で、理想が、幻想が、ガラスのように音を立てて砕けたような錯覚。

その破壊の余波が、思考を止める。
故に、発端が自身である事だと気付ける筈も無く。
自身が、少年の未来を左右する最後の鍵である事など、理解出来る筈も無く。

目に映る物全てを理外へと放り出したが故に、傍を抜ける影に気付く筈も無かった。


――――


上条「……ごめんなインデックス。でも、俺にはこうする事しか出来ないんだ」

この場に居らぬ同居人に謝罪の言葉を吐きながら、上条当麻は壁に右手をつきながら、ただ先を、窓の無いビルを目指す。
その歩みは牛歩の如く遅い。が、それが今の彼にとっての最大速度。

一歩足を進めるたびに、言葉にし難い違和感が彼の身を襲う。
その苦痛は言葉に出来ぬほど。常人ならば、一歩も歩く事は叶わぬだろう。

それでも、彼の足は止まらない。
尻に石突を深く埋めて尚、穂先が地を擦る振動がその尻を襲い続けているにもかかわらず。

上条「…………一方通行。お前が笑っちゃいけねえって、幸せになっちゃいけねえって誰が決めたよ」

彼は見返りなど求めない。自身の犠牲を厭わない。
ただ彼は、見知った者が落ち込み、悲しむ顔を見るのが何よりも嫌いなのだ。

上条「もし、だけどよ……お前自身がそう思ってるってんなら、先ずは――」

不意に、彼の体が揺らぎ、右手が壁を擦った。
重力に惹かれるままに、その身は彼の意思を無視したまま、前のめりに、地面へと向かう。

その頬が地に触れた時、彼の心は、諦めを覚えるだろう。
その時、彼は一つの終わりを迎えるだろう。

もう二度と、何かに立ち向かう事など出来はしない。
彼は、一人の弱者へとなり果てる。

それはヒーローとしての、終焉。
それは上条当麻にとって、ある種の死と言っても過言では無いだろう。


やがて――鈍い音がした。


上条「――――」

少年の半開きになった口から声が漏れる事は無かった。
閉じかけた瞼から窺える眼は呆として、その先を見つめる。

上条「あ――」

視線の先にあったのは、地面ではなかった。
よく見知った黒色の生地。そして、視界の端に映ったのは、

上条「あ、あ……」

彼の良く知るものと同じ、青色の髪。
思考に霞の掛かったままの上条当麻の声が震える。

青ピ「なぁ、上やん。無茶と無謀って、似てるようで全然違うと思うんやけど」

優しく、諭すように掛けられたその声に、上条当麻の意識は嫌が応にも引き戻される。
そして、その顔が、涙を堪えるように、痛みを堪えるように、くしゃくしゃに歪む。

上条「なんっ……でっ……」

何故こんな場所に来てしまったのかと。
何故自身の命を蔑ろにするような真似をするのかと。
頼むから、日常に戻ってくれ。こんな馬鹿は俺一人で十分だと。

呻きにしか聞こえない、掠れた声で上条当麻は憤る。

その言葉は、確かに青ピに届いた。
その筈なのに、彼はいつもと同じようにヘラリと笑い、

青ピ「なあ上やん。ボクかて、あーくんの友達なんやで?」

そう言い切った。


――――


称するならば、滾り。
それは、彼の者の心身を支配する。

――汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん

その一文は、滾りに支配された彼の者にとっての真理。
彼の者が、理知的なる頭脳を行使出来る状態であったならば、それは容易く実行されたであろう。

しかし、それは心身を支配する滾りにより阻害されている。
そして、彼の者は自身が気付かぬ内に枷に束縛されていた。

――オカズが無ければ抜けぬ

米のみは食事にあらず。と同義であろう贅沢病に侵されてしまっていた。

故に、彼は悶え苦しむ。
触れれば迸るであろう滾りの元凶を持て余しながら。


つづーく



――そこは、現と幻の交錯する場所。
現の法則が適応されながらも、それを観測できるのは只一人であるが故に。
観測者が、理を捻じ曲げる事の出来る力の持ち主であるが故に。

それ故、現と隔絶された場所。
物理的に、瓦礫を巻き上げる嵐によって隔絶された場所。
只の人には立ち入る事の出来ぬ場所。

そこに在る事の出来るのは只一人。
在る事の出来るのは、最強であった、最強であり続けるはずだった存在。

そう――

「…………無様、とでも言うべきか?」

――ただ一人だけの筈だった。

一方通行「……なンで、お前がいる」

イレギュラーに動揺する事も無く、一方通行は声の方へと振り返る。
その声で誰であるか察し、その上で、コイツならば。と思ったが故であろうか。

一方通行「店番はどォした、杉谷さンよォ」

杉谷「……俺としては、何故。と問われたところで、任務だから。としか答え様が無いのだがな」

不快感を露にした一方通行の言葉を受け流しつつ、杉谷は手にした紙袋を一方通行の足元へと放り捨てる。

一方通行「……」

杉谷「……?」

が、一方通行の目にその紙袋は映らない。
一方通行の思考と視線はそこに届かない。
彼の視線は、振り向いたまま、固定されていた。

杉谷は、一糸纏わぬ姿であった。
だが、その身には傷一つ無い。

衣服は犠牲となった。
衣服さえもこの瓦礫を撒き上げる嵐への供物となったのだ。

過酷という言葉に生温さを抱く程の試練。
それは、杉谷に昂揚を覚えさせ、更には彼が未だかつて感じた事が無いほどの性的興奮を覚えさせた。

一方通行「チッ……俺だってなァ、あとニ、三年すりゃァよォ、そン位に……」

杉谷「そこから、か。この学園都市の技術の粋を以ってすれば可能だろうが、それで並んで貴様の自尊心は満たされるか?」

一方通行「……成長期舐めンな」

一方通行の言葉に、杉谷は言葉の代わりに腰を振るって応える。
風を斬るは、彼らの立つ窓無き棺にも負けぬほどに雄々しくそそり立つ丸太。

その行為は明らかな挑発。
だが、一方通行の表情が変わる事は無い。
苛立ちを視線に乗せる事も、悔しさに歯を軋ませる事もなく、ただ一言。

一方通行「……用が済ンだンなら帰れってンだ」

そう吐き捨て、顔を背け――――彼が顔を戻した時、杉谷の姿はどこにも存在しなかった。
まるで煙が逆巻く嵐に千々に刻まれたかの様に、杉谷がそこに在ったという痕跡は無かった。
一方通行の前に投げ捨てられたままの紙袋を除いて。

一方通行「……チッ」

一方通行はその紙袋に目を向けはしたものの、手を伸ばそうとはしない。

彼の心は今この時、乱れ、叩きのめされ、そして、萎れていた。
彼のポークビッツには勝っているが人並みとは言い難い逸物もまた、萎れていた。

それもまた当然。
いかに滾っていようが、同性の限界まで屹立したモノを見て滾りを維持できる筈がない。

一方通行「幾ら成長しよォがよォ、あンなもンに勝てる訳ねェだろォがよォ……」

―― 一方通行は、二度目の下半身的な意味での敗北を以ってようやく理解する。

貧乳であるが故に、如何にして大きくするかと苦悩する者の心境を。

喪男であるが故に、彼女持ちには無条件に見下されているいう錯覚を。

巨乳と並んで歩き、視線が隣にばかり向かう者が覚える屈辱を。

持たぬが故に覚え、伴侶を持つ者へと向けてしまう嫉妬を。

そして、自身がどう足掻こうが決して届く事は無いという――――諦念を。

彼は気付かない。
その理解が、心を蝕む毒だという事を。

彼は気付けない。
その毒が、前へと進む力を削ぎ、未来さえも奪わんとする猛毒である事を。

彼は未だ気付けないままでいる。
その眼前に在る紙袋が微かに透け、その中身が毒への特効薬である事を示しているというのに。

彼には見えていないのだ。
微かに透けた、巨乳大全の文字が見えてはいないのだ。


~~その頃のロシアン~~


番外個体「……ぅひぃ」

滝壺「……ぬふぅ」

浜面「おいおい、どうしたよ二人揃って変な声上げて」

番外個体「ぅうーわ何コレ……これキツ過ぎてミサカすっごい頭痛いんだけど……」

浜面「風邪か? 体調悪いなら寝た方がいいんじゃねえか?」

滝壺「違うよ浜面」

浜面「違うって……じゃあ」

滝壺「来るの。招かねざる客、極東からの来訪者が」

浜面「……?」

番外個体「うぅー……あぅ、やば、ちょっ、ミサ、カ、トイレに隠れ、て

バンッ


御坂「フヒヒwwwwwwwwwww上条総受け百本勝負本があると聞いてはるばる学園都市からやってきたでござるよwwwwwwwww」


白井「お姉様×お姉様20002本勝負本があると聞いてきましたのwwwwwwwwwwドゥフフフwwwwwwwwwwwwwwww」


番外個体「おそ、かった……」

御坂「無いなら出来るまで待つでござるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww待つでござる」

白井「何年でも待ちますことよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwそれこそ苔のむすまで」

浜面「なんで第三位と金魚の糞が……って、コレがアレか。滝壺が云ってた奴らか」

滝壺「……う、ん……零距離だと毒電波ががががががが……」

浜面「滝壺? 滝壺!?」

滝壺「浜面の汁だく本があると聞いて」

浜面「うぉぉぉぉぉい!?」

麦野「あ、それ私も読みたい」

浜面「ちょぉぉぉぉぉ!?」


続く

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Author:ひちょりまちょめ
コテ酉無しです。
でも一話の最後見たらすぐ分かる仕様です。

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