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とある○○の○○○○その6

――『人間』の硝子越しの先にあった世界を映す小窓が、次々と消滅していく。
空間上にあった実体を持たぬそれらは、幻想であったかのように消え去っていく。
最後に残された一つは、唯一実体を持ち、厚みを持ち、電波を受信し、電気で作動する小窓。

人、それをテレビジョンという。

それもまた映像にノイズを交えた後、完全に沈黙。

「……先ほどの一撃の影響か」

苦さを覚えたかのような表情で呟きながら、『人間』は瞑目する。
そして思考する。後悔する。もっと早くテレビを換えるべきであったか。と。
が、この都市の開発に着手してから今この時まで、余りに永い時を共にして来た同胞をそう容易く替える事等出来るはずもなく。

『人間』は瞑目したまま、天地逆転した状態で、黒色の何かを片手に、ビーカーの中に浮いていた。
故に、テレビに触れる事は出来ない。

更に、先程の衝撃で通信網にトラブルが生じたか、通信がどこにも繋がらない。
それ故、『人間』はテレビに絶妙な角度で打撃を入れる事が出来ずにいた。

「……状況把握も出来ず、暇潰しも許されない。というのは少々退屈が過ぎるな」

言葉と共に、鈍い音が二度鳴った。
それが何の音であるかを理解するのは、観測者である『人間』――そして、もう一人。

「~~~~~~~~ッ!!!!!!!!!!!」

召喚され、頭部をテレビの角で強打し、のたうつ者。

直後、沈黙していたテレビが再び像を映し出す。
映し出されたのは、

篝火の前に棒立ちとなった、人に持てるとは思えぬ巨大な鈍器を片手に、頭に宝箱を被り、
胸元まであるコルセット付きの白スカートを履いた、太ましき中年男性のキャラクター。

「むぅ……心の狭い黒ファンだったか……」

それを眺めながら、『人間』は床でのた打ち回る者に目もくれないままに溜息を吐く。

それから数秒した頃だろうか。
ようやく『人間』は、未だ床でのた打ち回り続ける者へと目を向けた。

「余り無様な姿を晒すな。それでも君は――――」

「んごぉー!ごっ!もごぉー!」

『人間』はそれに何を見ただろうか。
それは『人間』と酷似していながら――否。同一でありながら、余りに違っていた。

身体は縄で芸術的な縛りを施され、両の眼は革製の目隠しで封じられ、

鼻腔は金属製のフックによりその内側を醜く晒し、

口腔は穴の開いたピンポン球の如き物で閉じる事すら叶わず涎を垂れ流し続け、

よくよく見れば腋毛はペルシャ絨毯の様に緻密な編込みが施され、両の乳首には特に何もなく、

股間には“未元工房”最終作『未元淫孔(ダークアナー)』

尻に深く突き刺さるは衝撃の杖、

そして――――脛毛は一毛たりとも余す事なく無理矢理三つ編みとされていた。

「エイワスめ、悪戯にしては度が過ぎているぞ…………まぁいい」

その呟きと共に、再び、鈍い音が二度鳴った。

「……」

「もごぉ……ぐっ……もぐぅ……」

再度、どこからともなく落下して来た者もまた、芋虫の如くのた打ち回る。
更に八度、鈍い音が鳴る。全てが、見てはならぬものであった。

「……ぁ」

『人間』は、それらから目を逸らす事が出来ずにいた。
ただ眺め続ける事しか出来ずにいた。
『人間』が下界に直接手を下す為のもっとも有効な手駒全てが、彼の眼前で芋虫と化しているが故か。

「……」

『人間』はどうする事も出来ずにいた。
滞空回線からの情報は断絶、通信の接続も遮断され、自身の手足たる自分自身すら封じられた今この時の彼は籠の中の鳥も同然。
いや、籠の中の鳥がまだマシであろう。自身の声が誰かに届く可能性があるのだから。

『人間』の声は決して誰にも届く事はない。
少なくとも、事が全て終わるまでは。

――幸い、と言うべきであろうか。
『人間』はただ一点を見つめたまま放心していた。
故に、自身が籠の中の鳥よりも惨めな存在である事に気付けない。

『人間』視線の先にあるのは初代PS3(20G)
正しく述べるならば、初代PS3(20G)であったガラクタ。
10時間に及ぶキャラメイク、そして1200時間に及ぶ人間性とソウルの結晶は、永久喪われてしまったのだ。


――――


結標「……どうにも騒がしいわね。海原、貴方何か聞いてないの?」

端末で暗部内を行き交う情報を見つめながら、結標淡希は向かいのソファーにて煎茶を啜る同僚、海原光貴に尋ねる。
しかし尋ねられた当の本人は聞こえていないかの様に、ずず、と煎茶を更に一啜りした後、茶請けの芋羊羹を齧って頬を緩ませていた。

結標「海原。ねえ海原、聞いてるの?」

海原「あ、ああ。そう言えば海原は僕でしたね。申し訳ない」

結標「……知り合いの見舞いに行く度にそうなって帰ってくるわよね」

海原「あの子と一緒にいると昔に帰った気分になってしまいまして……心の切り替えが上手くいってないのでしょうね。それで、何の話でしょう」

結標「外が騒がしいみたいだけど、あなた何か聞いてない?」

結標の言葉に海原は首を横に振り、再び煎茶を啜り始める。
何かを聞いていたとしても、何らかの命令を受けていたとしても、結標の疑問を晴らす答えが彼の口から出る事はない。

それも当然。今回の件の全容を知るのはアレイスターとエイワスのみ。
彼らから命令を受けた者らも、

『本屋でエロ本の置き位置を少し変える』
『いつもよりも生地の薄い、乳を強調した服装で街を歩く。但し巨乳に限る』
『雑誌の表紙、広告の看板をいつもより少しだけ際どい物に変える』

などという、それだけでは何の意味も持たぬセクハラまがいの命令では意図を理解出来よう筈もない。
故に、理事長も遂に気が狂ったか。理事長も色を知る歳か。などという言葉と共に、その命令は意図を深くまで探られる事もなく果たされた。

――社会人であれば、上の人間の気が狂ったなど考えたくはない。
伝聞であっても広めるなど以ての外なのだ。

それ故に、結標には何の命令もなく、何らかの情報が届く事もなかった。
もし彼女に命令が届き、いつもより生地の薄い服を着よう物ならば色々と見えてしまうから。

彼女自身が意図せずにとしても、一方通行の目の前で扇情的な行動を取ってしまったならば。
果たして、一方通行に少年性を見出してしまった結標淡希は情欲の獣と化した一方通行を撥ね退ける事が出来るであろうか。

答えは否。
心情的に。という点もあろうが、それ以前に彼女と一方通行にはどうしようもない程の実力の差がある。
如何な手段を使おうと組み伏され、贄となる未来しかないだろう。

そうなってしまっては、色々と青少年の健全な育成を疎外するような描写を入れねばならない。

とある魔術の禁書目録は一応全年齢対象である。
その二次創作であるとある豆芽の手淫進化も一応全年齢対象なのだから、その様な描写は避けねばならぬのだ。

海原「……僕達には特に命令も降りていない訳ですし、このままでいても良いのでは?」

結標「そう、だけど……」

言葉尻を濁しながら、結標は思考を巡らせる。
彼女の脳内を巡るは、都市内の騒動の理由と、学園都市理事長への反逆の糸口。
その思考は『グループ』という暗部組織の中で反骨精神溢れる者共の一員であったが故か。

否。それは彼女が元々持ち合わせていた気概。
元より彼女は学園都市に対する反逆者である。
それは今尚変わらない。

だからこそ、彼女には、グループという組織に属する者達には素質があった。
最低の結末を認めず、否定し、拒絶して、最高の結末を手に入れる鍵となり得る素質が。

結標「……」

海原「おや、どちらへ?」

結標「この状況なら、上層部に食い込む隙がどこかにあるかもしれないでしょ?」

海原「……なるほど」

頷きと共に、海原は湯呑みに入った煎茶を飲み干し、残った芋羊羹を口の中に放り込む。

海原「はらは、ほふほひっひょひひひはひょう」

結標「……日本語で喋ってくれない?」

海原「ほっほひふへひ……土御門から、貴方が動いた時に共に動け。とのお願いがあったもので」

結標「土御門が、ねぇ……」

どこまで読んでるんだか。と口中で呟きながら結標は扉へと向かう。



海原「……まだ、ですか」

結標「一週間振りなの!もうちょっと待ってなさい!」

誰も玄関とは書いていないのであった。


――――


――竜巻の消えた学園都市。
その中枢、窓のないビルの周囲は静寂に包まれていた。

静寂を終わらせたのは、貫きの音。
一本の柱が、窓の無いビルの壁を穿ち貫いた音。

柱はしなり、逆の側を天へと、屋上へと運ぶ。
屋上へと運ばれたは上条当麻。そして、令嬢の如く抱えられた青髪ピアス。
白色の少年は、下半身をさらけ出したまま、声を出さずに笑う。

三つの視線は濃密に蜜時の舌の如く、濃密に絡み合う。
だが、その表情は友であるとは思えぬほどに殺伐としたもの。

始まる。
終わりが、始まる。


神裂「ああ……今日は貴方の温もりがひとしお愛おしいです」

洗濯機「……」ゴゥン



――始まりに言葉は無かった。
三者が口を開くより、言葉を紡ぐより先に、親指ほどの大きさの金属製円錐が一方通行の眼前にあった。

放ったのは青髪ピアス。
固定時に運動エネルギーが蓄積される事を利用した、不意を突いた一撃。
当然の如く、それは容易く放った者の元へと反射され――

青ピ「格下やからって舐め過ぎやであーくん」

――青髪ピアスの額、薄皮一枚分手前で停止する。

一方通行「――オマエが舐め過ぎてンだよォ!」

が、その時既に一方通行の姿は青髪ピアスの眼前。
固定された円錐を押し込まんばかりに、彼の掌は放たれていた。

しかし、

上条「甘いっつうの!」

一方通行「チイッ!」

異音と共にそれを阻むは上条当麻の右手。
止められたと気付くと同時に、一方通行はその身を翻し左足で床を擦りながら能力を発動。

巻き上がるは、床に落ちた瓦礫、そして砂塵。
銃弾の如き速度でそれらは障壁を生み出し――

青ピ「うーん……僕の能力、さっき見せた上に銭湯で説明したと思うんやけどなあ」

――直後、それは固定される。
視界を阻まれた。と一方通行が悔いたと同時に、障壁は穿たれる。
それが何かと気付くより先に、一方通行は能力の加減すらままならぬまま、大きく飛び退く。

過去の、『実験』の最中の一方通行であったなら、それを反射しようとして、最悪の形で戦闘は終了していただろう。
だが、今の一方通行に慢心はない。頭に血を上らせる事もない。血を集めるのは股間ただ一点のみ。

一方通行に蓄積された戦闘経験と、実践の中で研ぎ澄まされた直感。
それが、障壁を穿ったものが危険極まりない存在だと警鐘を鳴らした。

銃弾と等しき攻撃の速度が、ではない。
窓のないビルの外壁を貫く鋭さ、でもない。
それは、もっと別の、もっと危険な本質を秘めた何か。だと一方通行は判断した。

その警鐘は正しい。
自分だけの現実を保持し、その上で魔術の存在、概念を身を以って知った一方通行だからこそ――

上条「おおおおおおおおおおおおおおっ!」

一方通行「クソがァ!」

――上条当麻の尻より生えた竜王の尾の存在を、現実として、脅威として受け入れた。
故に、反射を行おうとはせず、出来うる限り接触せぬよう大きく回避を続ける。

が、それは長くは続かない。
大きくしなった竜王の尾の薙ぎ払いを避けようと跳躍し、彼の足元を丸太の如き尾が通り過ぎた直後、

青ピ「あーくーん? 上やんばっかやなくて僕にも構ってーや」

その身体は、彼の頭上に在った青髪ピアスの作り出した見えない壁に阻まれた。

一方通行「ぐゥ……ドサンピン風情がやってくれンじゃねェか」

衝撃は自動的に相殺されたとは言え、予想外の事態に一方通行の着地の姿勢は乱れる。
規則的に揺れていた玉袋もまた、竿と共に大きく振るわれた。

青ピ「そらなあ、僕ってやる時はやる男やし……そんな事より、よそ見しとってええんかいな?」

そして、一方通行が青髪ピアスの言葉につられるように、彼の視線を追った時――眼前には再度打ち振るわれた竜王の尾。

一方通行「――――」

思考より先に反応したのは本能。

一方通行「立派なモン生やしたからって調子に乗ってンじゃねえぞォォォォォォォッ!」

上条「俺だって好きで生やした訳じゃねぇぇぇぇぇぇっ!」

叫びと共に顕現するは、彼の身を覆う程度の大きさの猛禽類の翼に似た黒翼。
大きさ、という観点のみで言えば彼が今までに顕現させたものとは比べるべくもない。
だが、その一対の黒翼に凝縮されたエネルギーの密度、そして安定感はかつて顕現させた黒翼とは天と地ほどの差があった。

――竜王の尾に対し一方通行が覚えた感情は、恐怖でも戦慄でもなく落胆。
無能力者でありながら、塵芥の如き存在でありながら、二度までも己を止めてみせた者の輝きが急に色褪せてしまったかのような錯覚。

人が化け物を打ち倒すからこそ意味があるのだ。
化け物同士が殺し合えばただ強い方が生き残るのみ。

ならば。
化け物同士であるならば。
そちらが化け物として自身に襲いかかるのならば。

己もまた、化け物として相手する他ないのだろう。

――竜王の尾と黒翼が触れ合う。その能力を侵し合う。人に在るはずのない部位を砕き合う。
生まれた異音は軋みと言うには余りに大きく、歪で、不定で、まるで

上条「一方通行ァァァァァッ!」

一方通行「三下ァァァァァァッ!」

人の身では持ち得ぬ力を持ってしまった少年達(ばけものども)の咆哮の様だった。


――大きく、揺れていた。縦へと。横へと。滑らかに。縦横無尽に。
防護服が脱ぎ捨てられ、枷の解かれた大きく突き出た球形は、コレ幸いと云わんばかりに御乱心であった。
四肢を束縛する鎖から解き放たれた猛獣の如く、未だ二枚の布着にという枷に遮られて尚、圧倒的という言葉が相応しいほどに大きく揺れていた。

それを見た者がいたならば、音届かぬ距離であろうとも漢の魂を打ち震わす弾力に満ちた音を聴いたであろう。
意せぬ内に、その球形の一挙一動を網膜に焼け付けんと、人の目を憚らず瞬きを忘れ凝視したであろう。
もし傍に在ったならば、揺れから生まれた空気の流れに触れ、その感触に想像を掻き立てられたであろう。

それも致し方なし。
昔、誰かが言った。『そこには――おっぱいには漢の夢が詰まっている』
それが真理であればこそ。

貧乳が小さいのは何故か。
ささやかな夢や、現実的な夢ばかりを詰め込んでいるからだ。

婆の乳が垂れているのは何故か。
そこには枯れた夢しか詰まっていないからだ。

ならば――巨乳には如何なる夢が詰まっているか。
そこに詰められているのは浪漫。
男ならば一度は夢見るであろう大きな夢が、コレでもかという程に詰まっているからこそ大きいのだ。

故に。
夢見る男は大きなおっぱいが好きなのだ。


黄泉川「……桔梗。そんなしょうもない事をナレーション風に言いたいが為に態々電話してくるとか、間違いなく嫌がらせじゃんよ」

芳川「そんな事言われるなんて心外ね。でも、これはとても大切な事よ。特に一方通行みたいな思春期の若い子に対しては殊更

黄泉川「うがあああああああああ!」

芳川桔梗の言葉は、黄泉川愛穂の叫び、そして携帯電話が握り潰されると共に断絶された。

黄泉川「ああああああああああああああっ!もう!」

状況が状況でなければ黄泉川愛穂はその場で心行くまでのた打ち回っていただろう。
もしそうしていたなら、彼女のオッパイの躍動は未知の領域を我々に見せてくれていただろう。


――――


――竜巻の破裂による衝撃。
それを受け流し、月詠小萌へと注ぎ込んで尚、結界は顕在であった。

だが、完璧にとは行かない。
術式の施しが甘かった数箇所に生まれた綻び。
それはその周囲に掛けられていた人払いの術式に干渉し、破壊した。

偶然か。それとも必然か。
まるで狙ったかのように、その綻びを錯乱状態に陥った巨乳が駆け抜けた。

「えっ…………えっ?」

侵入者の存在に最初に気付いたのは、月詠小萌。
今この時、彼女は結界の陣の一部と化しているが故に、その感覚も等しく広がっていたからこそ気付いた。
結界の境界を踏み越えた黄泉川愛穂を。

小萌「な……なんで黄泉川先生がー?」

思わず驚きの言葉が口から漏れる。
つい先刻の衝撃を受け止めたが故に、感覚にノイズが走り内部の状況は分からない状態。
だが、ただの人間が足を踏み入れていい場所でなくなっている事は確か。

その様な場所に、身体能力に優れているとは言え、ただの人間である黄泉川愛穂が踏み込めばどうなるかなど、想像は容易い。

しかし、今の彼女に侵入者を止める術はない。
彼女が今の位置から離れれば、陣はその意味を成さなくなる。
ただの一瞬離れただけであったとしても、その瞬間に第ニ波が訪れたらと考えれば、二の徹を踏んでしまう事も無理は無いだろう。

小萌「えっと、黄泉川先生の足に追いつけるのは……」

月詠小萌は思考する。
黄泉川愛穂とはそれなりに深い付き合いをしているが故に、彼女の性格もその身体能力も知っている。
男性遍歴が碌にない事も。同居人がニートと化している事も。独身なのに子持ち同然の状態になってしまっている事も。

だから、土御門を介して天草式の者達を動かした所で間に合わない事は分かっている。
かといって、自身がこの場を離れれば、陣はその役を果たさなくなるどころか、下手をすれば陣が暴走する危険性すらある。

が、それ以前に。

小萌「うぅ……ちょっと位なら……あぁ、でもこの格好じゃあ……」

ボロ布と化した衣服のままで黄泉川愛穂に話しかけよう物ならば、この先十年は話のネタにされるだろう。
そもそも、この格好はどう考えても如何わしい行為を無理矢理やられたような――

黄泉川「        」

小萌「         」

何故。という言葉すら月詠小萌の口から漏れる事はなかった。
黄泉川愛穂もまた同様。

唖然とした表情のまま、月詠小萌は再度思考する。
何故、彼女が目の前にいるのか。彼女は窓の無いビルの方へと一直線に進んでいたはずなのに。
黄泉川愛穂がこちらに気付く要素など何一つなかった。こちらに来なければならない理由などない筈だった。

それが――

小萌「ッ!?」

突然の光に月詠小萌は瞼を強く閉じる。
同時に耳に届くは機械的な音。
それが、二度、三度と続いた。

小萌「あっ、ななななんで撮ってるんですか!? 携帯をコッチに向けないでくださいー!」

黄泉川「いや、警備員が状況把握の為に写真を撮っておくのは当然じゃんよ」

――懇願は無碍にされ、その在られもない姿はカメラによって記録された。
コレも一種の職業病であろうか。シャッターを切り続ける黄泉川愛穂の表情は至って冷静。
つい先程までの錯乱した様子は微塵も感じられる事はない。

対する月詠小萌の表情は取り乱し、涙目になり、羞恥の余り頬を桃色に染めたもの。
その上で、スカートの隙間から下着が見えぬよう手で押さえる姿は、幼女嗜好が無かったとしても、嗜虐芯を強くそそられるであろう。

しかし、その涙を湛えた眼の奥には月光の如き、暗く冷たい光。
その口に牙在らば、唇は剥かれ、並び立つ尖りを軋ませていただろう。
理性によって封じられていた人在らざる者の本性、紛い物の神として造られた存在意義。

胸中にて膨らむは――殺人衝動。

月詠小萌が足に力を込めて踏み出せば、黄泉川愛穂が反応するより先に懐に入る事は容易い。
月詠小萌が少しだけ本気を出して腕を振るえば、豆腐に針を通すが如く、容易く心の臓を貫くだろう。

あのおっぱいさえなければ。
眼前のおっぱいがただ大きいだけのおっぱいであったならば、彼女は衝動に身を任せていた事だろう。

だが、黄泉川愛穂のおっぱいは完璧すぎた。
嫉妬心を抱く事すら許されぬほどに。

月詠小萌は知らずの内に、持たぬがこらこそ、それに崇拝に近い憧れを抱いてしまっていた。
それ故に、おっぱいに傷つける行為など出来る筈もなかったのだ。

己の中の殺人衝動を噛み殺すかのように、月詠小萌は一度歯を軋ませる。
そして、数度の深呼吸で息を整えて、黄泉川愛穂に問い掛ける。

小萌「あのっ、黄泉川先生」

黄泉川「写真なら野郎共には絶対見せないから安心するじゃんよ」

小萌「それは当然です! じゃなくてですね、なんで私の事に気付けたんですかー?」

それは当然の疑問であった。
黄泉川愛穂が向かっていた方向と、月詠小萌がいる位置とでは大きく方角が異なっていた筈で――

黄泉川「………………あ」

黄泉川愛穂の顔から、見る見る内に色が失せていく。
そして、その顔がぎこちなく後ろを振り向き――その喉から、ヒィ。と声にならぬ悲鳴が漏れた。
彼女の視線の先には、


      おっぱい!
    おっぱい!

  -=≡  _ _ ∩

 -=≡  ( ゚∀゚)彡←建宮

-=≡  ⊂ ⊂彡

 -=≡  ( ⌒)

  -=≡ cし′


      おっぱい!
    おっぱい!

  -=≡  _ _ ∩

 -=≡  ( ゚∀゚)彡←牛深

-=≡  ⊂ ⊂彡

 -=≡  ( ⌒)

  -=≡ cし′


      おっぱい!
    おっぱい!

  -=≡  _ _ ∩

 -=≡  ( ゚∀゚)彡
←土御門
-=≡  ⊂ ⊂彡

 -=≡  ( ⌒)

  -=≡ cし′



目を血走らせながら叫びを上げ、全力で腕を振りながら駆けて来る天草式十字凄教の野郎衆の姿があった。





上条「っらあああああ!」

一方通行「舐ァめンなァァァァァァァァァァァ!」

――黒色の硬質な翼と、大樹の如き色形の尾が衝突する。
尾は軌道を逸らして床へと突き刺さり、黒翼は一方通行の身体ごと大きく弾かれる。
その瞬間だけを見れば、一方通行は辛うじてながらも上条当麻の一撃を受けきったと言えるだろう。

が、受けられる事は上条当麻にとって想定内。
次撃こそが、本命。

上条「気ィ抜いてる暇なんてねえぞ!」

一方通行「ッ!?」

一方通行が体勢を立て直す寸前、上条当麻の叫びと共に、床に突き刺さった竜王の尾の像がぶれる。

――障壁を貫き、窓の無いビルを穿った竜王の尾。
その根幹を成すは、五和の保持していた海軍用戦場槍(フリウリスピア)。
施されていた術式は――――年輪を由来としたもの。

一方通行「なンだってンだ……コイツァ……」

年輪とは、樹木に在るもの。
樹木とは、根幹より支柱――――枝を生し広げるもの。
そこから生まれたのは、幾百、幾千もの枝。

それが、一方通行を包み込む様に襲いかかる。

上条当麻の甘さ故か。
それとも、慣れぬ力故に御しきれず、間違って殺してしまわぬ様にという配慮か。
枝の先端は鈍器の如く膨れ、奇妙な丸みを帯び、先端からは奇妙な液体の滴り――それ故の恐ろしさが一方通行の菊孔を窄めさせた。

一方通行「まるでよォ……とびっきりの悪夢じゃねェか……」

――--太い線が、細い線が、徐々に視界を埋めていく。
絡み合い、その途中から更に枝を生す。まるでこの世界を侵食するかの様に。

ほんの一秒に満たない時間であったが、一方通行はその様を呆けた表情で見つめていた。
理解出来ないものに対する恐怖に心が縛られてしまっていた。
その呪縛を解いたのは、

上条「終わりだ一方通行!」

一方通行「――――ッざけンな!」

皮肉にも上条当麻の叫び。
我を取り戻すと同時に、黒翼が縦横無尽に振り回され、襲い来る枝を一気に薙ぎ払う。

幾度も。

幾度も。幾度も。

幾度も。幾度も。幾度も。

それでも枝が減る事は無く。
拮抗はしているものの、それ以上になるかと言えば否。と言わざるを得ない。

一方通行「ちィィ!」

枝と打ち合わせる度に、無理矢理叩き切る度に恐るべき硬度を誇る筈の黒翼の表面が削られていく。
それは、上条当麻の右手には劣れども、枝の一本一本が幻想殺しと同様の力を持っているという事実他ならない。

少しでも反応が遅れれば勢いに負け、形勢は一気に傾くであろう状況。
故に、一方通行は極限まで集中していた。彼の世界から音も色も消え去るほどに。

だから、一方通行は、失念していた。
今この時、自身に降り注ぐ攻撃の余りの苛烈さに意識を集中させ過ぎた故に。
その存在をその他としてしか捉えぬ、ある種の傲慢さがあったが故に――もう一人、この場にいる事を意識から除外していた。

「――――あーくんって、ホンマいけずやなあ」

一方通行「ッ!?」

声が聞こえたのは一方通行の後方。
彼が振り向くより先に、何かが風を裂く音がした。

一方通行が振り向こうとしたのは、あくまでも反射的行動に過ぎない。
彼は今この時になっても“その他”をまだ甘く見ていた。
相手が能力者であるなら自身にとって虫けらにすら等しいという考えを捨てきれぬほどに、自身の能力を過信していた。


――故に。
音は響いた。


まず、何かが砕け散る音。
そして、肉へと何かが挿し込まれた音。


砕け散ったのは、一方通行の反射膜。
挿し込まれたのは、青髪ピアスの突き出した一本の枝。


それが深々と。
突き刺さっていた。


小ぶりながらも張りのある、艶やかで染み一つない尻の最奥に。
大気に晒されていた、一方通行の尻の最奥に。


深々と。
そう、深々とねじ込まれていた。


大輪の薔薇が花びらを散らす映像と共に。


一方通行「――――――――――――!」


一方通行の絶叫は、数千にも及ぶ枝の打突音によって掻き消された。


青ピ「―――――――――――――!」

上条「青ピぃー!すまぁーん!」

巻き添えを食らった青髪ピアスの絶叫もまた、数千に及ぶ枝の打突音によって掻き消されえたのであった。




御坂妹「これは…………流石に、白昼夢では無いようですね。と――」

――彼女は、彼女達は誰よりも彼と深く繋がっていた。

彼女らは誰よりも彼の強大さを知っていた。
その身を以って。10031体の犠牲を以って。
畏怖すらも抱くほどに知っていた。

打ち止め「……あの人の霊圧が消えたって――」

芳川「なん……だと……」

だからこそ、信じられる筈が無かった。
その反応が失われるなど。繋がりが途絶えたなど。その事が何を意味するかなど。

番外個体「……触手プレイ……ぎゃはっ、新刊はコレで行こうって――」

しかし。
信じようが信じまいが、事実は変わらない。

窓の無いビルの屋上で、倒れ伏したまま彼は動かない。
下半身を露にしたままで。尻に枝が刺さったままで――



――――



結標「……」

海原「……」

――眼下の喧騒に、二人は項垂れながら溜息を吐く。
それがただの気分の悪くなる光景ならば、二人は笑顔で談笑する事も可能で在っただろう。
その気になれば凝視しながら飯を食う事すら出来るだろう。その気になればの話であるが。

だが、二人の表情は暗く、重い。
まともでない喧騒の中に、知った顔が幾つも並んでいれば誰だってそうなるだろう。

結標「……こういう時、どういう顔をすればいいのか分からないわ」

海原「……笑えばいいと思います」

結標「…………流石に笑えないわ」

海原「…………ですよね」

二人が頭を抱えたのはほぼ同時。
認めたくないのだ。自身が認識したその光景を――


――不自然に腰を引いた姿勢。
濁りを湛えた眼の奥には、暗い欲望の光が宿る。
下品に歪められた唇は、その内を牙を剥くように晒す。

生えている者に於いて一人の例外なく。
獣の如く理を知らず、獣の如く己を律する事を知らず、獣の如く慈愛を与える事も知らぬかのよう。

彼らはその対極に在る者であったというのに。
奔放でありながらも自戒を知り、義に篤き者達であった筈なのに。

今は見る影もなく。弱者二人を取り囲むその様は、まるで野犬の群れにでもなり果てたかのよう。
男達は、一心不乱でありながら、狂気乱舞でありながら、怒涛且つ破竹でありながら、狂気に身を任せていながらも、
一糸乱れぬ統率で大きく振り上げた左腕を力強く振り下ろし続ける。

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   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J



おっぱい!おっぱい!の掛け声と共に。


その中央には、涙を目の端に溜め、ガタガタと歯の根も合わぬほどに震える二人の女性。
一人が震えるたびに、ボロ布と化した衣服がチラリズムの限界を突破し続けた。
もう一人が震えるたびに、神の奇跡と称しても過言ではない乳が、繊細且つ大胆に質量を持つ残像を生み出し続けた。

黄泉川「いったい、なんなんじゃんよぉ……」

小萌「うぅ……」

おっぱい「ぷるぷるぷる……」

その姿に、何かを感じない者がいるであろうか。
否。断じて否。漢に非ずとも。雄と称す自信なくとも。不能であったとしても。
喩えその目が見えずとも。その耳が聞こえずとも。触れる事すら香りを覚える事すら出来ずとも。

生えているならば屹立するのだ。
Stand Up To The Victory!Stand Up To The Victory!

一歩、また一歩と男共が歩を進めるたびに円陣は狭まっていく。
そして、男達の手が女性に触れるか触れぬかという距離で、

黄泉川「ひぃっ……」

黄泉川愛穂の悲鳴と共に、月詠小萌の唇が引き攣り、

小萌「……ギィ」

言葉としての意味を成さぬ呻きを漏らした。

その声は、酷く濁った様な声だった。
人の声とは言い難く、獣の唸りとも異なる、金属の軋みの如き声であった。
この世の物とは思えぬ声。絶望を音に表したかの様な声。

同時に、全ての動きが一斉に止まる。
男達だけでなく、月詠小萌の隣に在る黄泉川愛穂もまた同様。

そして――――生まれた静寂の中で、みちり。と内より張り詰める音が響いた。

男達が最初に確認したのは自身の息子であった。
獣と化したが故にか、謙虚な心などありはしなかった。

――男達は、月詠小萌が如何な存在であるかを知るが故に、その恐ろしさを深く理解している。
いや、それを一時的にとは言え失念していたのだから、“していた”と言うべきか。

しかしまあ、そこら辺はもうどうでもいい事なのだろう。
既に手遅れなのだから。どうしようもないくらいに手遅れ極まりないのだから――――


――――



上条「……暖かい」

上条当麻は誰に言うでもなく、そう呟いた。
その身体は震えていた。その声も震えていた。
尻から生えた尾も、それに呼応するかのように震えていた。

一方通行の身体が、小さく震えた。
その姿を上条当麻は見ていない。
でも、感じた。

上条当麻にとって温もりとは、温かさとは力の源であった。
癒しであった。安らぎであった。喜びであった。命を賭ける価値すらあった。

上条当麻は知らなかった。
温もりが、人の心を傷付ける事がある事を。

――いや、それは違うのだ。と上条当麻は頭を振る。
その動きにつられて尾が小さく揺れる。

一歩通行「ンあァああァァ……」

再び、一方通行の身体が小さく震えた。

上条「……資格を、失ったんだろうな」

この先、温もりを感じるたびに彼は思いだすのだろう。
この惨状を。あの感触を。そして、友の大切なものを奪ったという自身の罪を。

上条「……一方通行の中、暖かいんだな」

彼は、自分の罪を確認するかのようにそう呟いた。

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でも一話の最後見たらすぐ分かる仕様です。

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