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('A`)はただの童貞のようです 6話

――戦う者がいる。

企業の兵として、他社と戦う者がいる。

国家の狗として、社会の悪と戦う者がいる。

学術の僕として、方程式と戦う者がいる。

競技者として、己が限界と戦う者がいる。

脛齧りとして、現実と戦う者がいる。

そして、童貞として、素人童貞と戦う者がいる。

――皆、戦士と呼んでも差し障りの無い存在だろう。
戦うと云う事は、とても過酷なものだ。

――だからこそ、必要なのだ。
心の底から安らげる、休息と呼べる時間が。



第六話『Rest』



――草木も眠る丑三つ時。
寒風の吹く街に歩く者の姿は無く。
時折通るタクシーのライトと、コンビニの窓ガラスから洩れる光が、闇を幾許か和らげる。

そんな時間帯を迎えたバーボンハウス。
店内に残るのは、酒を飲みながら兄者さん達の帰りを待つ、ボクとドクオさん。
それと、流しで洗い物をしている、ショボンさんの三人だけとなっていた。

(*^ω^)「……兄者さんたち、遅いですお」

(´・ω・`)「まぁ、いつもの事だしね」

(*'A`)「……アイツらの事なら心配ねえよ。じき帰ってくるさ」

(*^ω^)「そう、ですかお……」

そう呟きながら、空になったグラスに自分で酒を注ぐ。
グラスに満たされてゆく、神秘的な、とろりとした色合いの酒。

ボクはそれを見つめながら、

(*^ω^)(……帰ってきてもらわないと困るんだお……)

などと考えていた。
奢りだからこそ、この時間まで飲み続けているのだ。
もしも帰ってこなかったら、ボクに残された道は飲み逃げしか残っていない。

(*^ω^)(……でも……)

浮遊感を覚えるほどに酔っている。
だが、幸か不幸か自制心は未だ残っていた。

まず、飲み逃げは駄目だ。悪い事をすれば警察に捕まる。
そんな事になれば、家族が悲しむだろう。

しかし、いいアイディアが浮かばない。
酔っていなかったとしても、ボク程度の頭では変わらないだろう。

ボクの頭で他に浮かぶ事と言えば、土下座してツケにして貰う位しか――

(´・ω・`)「……内藤君」

唐突に水の音が止み、ショボンさんが何気ない口調でボクを呼んだ。

(;^ω^)「フヒャ、ひゃい!?な、なんですかお?」

(´・ω・`)「驚かせてごめんね。でも、一応言っておくべき事があったんでね」

笑顔なのだが、その細められた瞼の奥の目は、笑ってはいない。
ボクはその視線に、こちらの考えを見透かされた様な、むず痒さを覚えた。

(´・ω・`)「二人が帰ってこなかったら、君には体で払って貰うから」

サラリと言われたその言葉。
それを聞いて最初に思い浮かんだのは、

(;^ω^)「……内臓を売るって事ですかお?」

(*'A`)「違うな。そんな手間の掛かる事じゃねえ」

ドクオさんの言葉を肯定する様に、ショボンさんが小さく頷く。
そして、再び向けられたその眼には、怪しい光が宿っていた。

(´゚ω゚`)「もっと、手っ取り早い手段さ」

(*゚A゚)「そう、まさに言葉どおりの払い方だ」

眼前、そして隣で瞳を輝かせる二人。
魔法としか喩え様の無い、不思議な術を使ったドクオさん。
チンピラを一瞬で打ち伏せたショボンさん。

そんな二人が、含み笑いを漏らしながらボクを見つめる。
こんな状況を蛇に睨まれた蛙とか、まな板の上の鯉とか言うのだろう。

ボクに成す術は、何もない。
どんな事をされようとも、それを受け入れるしかない。

ただ――口だけがボクの意から外れ、勝手に動き出す。

(;^ω^)「それって……」

どういう事ですか?そう尋ねるより先に、返事は紡がれていた。
ほぼ同時――いや、ショボンさんが僅かに早い。

(´゚ω゚`)「労働的な意味で、という奴だよ」

(*゚A゚)「性的な意味で…………あれ?」

(;^ω^)「……」

(;´・ω・`)「……」

――ドクオさんの言葉に、全員の表情が固まった。
どちらの意味が正しいのかと困惑するボク。
古典的過ぎて始まってるな、と言わんばかりの表情を浮かべるショボンさん。
そして、

(;'A`)「……」

冷や汗を垂らしながら、ボクとショボンさんを交互に見つめるドクオさん。
先程までの酔いは何処へやら、紅潮していた顔はいつの間にか青褪めていた。

(;´・ω・`)「ドクオ君、それは流石に引くよ」

(;'A`)「だ……だってよ、あの、その、普通こっちじゃね?」

(;´・ω・`)「どう考えても普通じゃないと思うよ?」

(;^ω^)「因みに、どっちが正解なんですかお?」

(;'A`)「いや、ほら、えっと……」

相当動揺しているのだろう。
ドクオさんの口から漏れるのは答えではなく、要領を得ない、あやふやな単語ばかり。

(;'A`)「いや、うん、アレでよくあるじゃねぇか……」

(;^ω^)「アレって……何なんですかお?」

(;'A`)「あの、その……」

ドクオさんが口を噤む。
だが、ボクもショボンさんも一言も発さない。

(*^ω^)o彡゚(わっふるわっふる!)

(*´・ω・`)o彡゜(わっふるわっふる!)

ボクらは待っているのだ。
ドクオさんが、再び重い口を開くのを。

(;'A`)「わーったよ。言えばいいんだろ言えば……」

遂に、口は開かれた。
きっと、ボクらの無言のプレッシャーに耐え切れなかったのだろう。

(;'A`)「アレってのは、エロほ」

しかしその言葉は、ものの見事に掻き消された。
店内に響いたのは、勢いよく扉が開かれた音。
それと――

( ´_ゝ`)「流石兄弟のいなーりー」

(´<_`;)「頼むから人のお稲荷まで触るのは止めてくれ」

自分のお稲荷だけでは飽き足らず、弟者さんのお稲荷にまで手を出す兄者さん。
そして、それを本気で嫌がる弟者さんの二人の声だった。

(;'A`)「おう!遅かったじゃねえかお前ら!」

先程の一軒を無かった事にしたいのだろう。
ドクオさんが声を張り上げて二人を迎え入れる。

(´・ω・`)「お帰り、二人とも」

( ´_ゝ`)「ああ。しかし、この季節ともなると外は寒いな。手が冷えて堪らんよ」

(´・ω・`)「もう冬本番だしね」

(´<_`;)「OK兄者。頼むから俺のお稲荷から手を退けるんだ」

( ´_ゝ`)「おててがちんちんするから嫌だ」

('A`)「何と言う兄弟愛……」

(;^ω^)「これは、兄弟愛なんですかお?」

ボクにも妹がいるが、流石にこんな事はしていない。
きっと兄者さん達兄弟が異常なのだろう。
そうに違いない。と、信じたい。

(´・ω・`)「とりあえず座ったらどうだい?」

( ´_ゝ`)「ああ。そうさせて……」

兄者さんの口から、残りの言葉が出る事は無かった。
最初の浮かれた表情は何処へやら、頬は引き攣り、その眼には僅かに涙が浮かぶ。

(´<_`;)「……おかしいな、見えてはいけない物が見えるんだが」

弟者さんも兄者さんと同じく、何らかの異常を察したのだろう。
何度も目を擦り、視線の先にある物体を確認している。

(;´_ゝ`)「な、なぁ、弟者……夢、だよな」

(´<_`;)「言いたい事はわかる。だが……真実、なんだろうさ」

( ^ω^)「……お?」

うろたえる二人の視線を追い、その物体を確かめる。
そこにあったのは、ボクらの傍らに置かれた、中身が半分程になった酒瓶。
それを目にした瞬間、

(*^ω^)「……ゴクッ」

至福とも言えるあの味を思い出した。
本当に、美味しかった。ヤバいとかそういうものじゃない。

飲んだ瞬間、鼻汁が出そうになった。感動した、とでも言えばいいのだろうか。
幸福という概念を飲み物にしたならば、きっとこういう味なのだろう。

(*^ω^)「ゴチになりましたお!」

(*'A`)「やっぱアレだな、高い酒ってのは高いだけの理由があるな」

ボクだけでなく、ドクオさんもその味を思い出したのだろう。
その表情は、恍惚としている。

(*'A`)「しかも……只酒だと思うと余計にな」

しかし――

( _ゝ )「アレだぜ?一本一万七千円掛ける二だぜ?」

( <_ )「それプラス、それより前に飲んだ分だぞ」

( _ゝ )「そしたらアレじゃね?それ加えたらお手当て半分くらい吹っ飛ぶんじゃね?」

( <_ )「ああ。間違いなく、な」

兄者さん達の顔に浮かんでいるのは失意。
口から漏れる声は絶望の底に沈み、膝は今にも崩れ落そうな程に震えている。
やがて、その両の手が頭を包み、

( ;_ゝ;)「「嫌ァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」」(;<_; )

耳を劈かんばかりの悲鳴が店内に響いた。


~~~


そして数日が過ぎ――日曜日がやってきた。

(;^ω^)「うへぇ……」

――ボクの目の前には、長蛇の如き人の列。
皆、暇人なのだなあ。と自分の事を棚に上げながら、右へと視線を向ける。
そこには、

( ´_ゝ`)「なぁ弟者。この場のカップルなんて全員死ねばいいのに、とか思わない?」

上下共に黒のジャージという格好で、暴言を吐きながら鼻をホジる兄者さん。
更にその右側には、

(´<_` )「……俺に話しかけるな。同類と思われたくない」

上下共に白のジャージという、兄者さんの2Pカラーっぽい格好の弟者さん。
そして左を見れば、

(;'A`)「……キモチワルイキモチワルイキモチワルイキモチワルイヒトオオイノキモチワルイ……」

青褪めた顔を紅いコートの中に隠しながら、延々と呟きを漏らすドクオさん。
正直、見てはいけないものを見てしまった気分だ。

左右どちらを向いても、見てはいけないものが存在するこの状況。
仕方が無いのでボクは、正面斜め上、VIP座という看板を見つめる事にした。

( ^ω^)「映画館なんて、中学生の時以来だお……」

――ボクらは、映画館の前に立っていた。
目的は唯一つ、スイーツの間で流行最先端と言われている映画、『恋空(笑)』を見る為だ。

( ´_ゝ`)「そういえば内藤、チケットちゃんと持ってきたか?」

( ^ω^)「大丈夫ですお。ほら、ここに……」

ちゃんとありますお。と言葉を続けながら、ボクが懐から取り出したのは一つの封筒。
先日の件で、やりすぎたと感じたのか、ショボンさんが兄者さんにお詫びとして渡した物だ。
それを何故ボクが持っているかと言えば、

(´<_` )「スマンな内藤君。我らの部屋に置いておくと無くしかねないんでな」

( ´_ゝ`)「時々掃除してるのに、何故か汚れてるんだよな」

(´<_`#)「元凶が他人事の如く言うな」

とまぁ、こんな感じな訳だ。

どうでもいいが、兄者さんが誰かに鼻糞を飛ばしていたのは気のせいだろうか。
コレもまたぶっかけの一つだよな、などと呟いていたのも気のせいだと信じたい。

( ^ω^)(そういえば……ぶっかけってなんだお?)

ボクの知らない言葉だ。
後で意味を聞いてみる事にしよう。

――待ち続けて二時間程経った頃だろうか。

( ^ω^)(そういえば……)

ボクは、封筒の中身をちゃんと確認していない事を思い出した。
枚数確認をした所で興味を無くし、今日まで放置していたのだ。

(;'A`)「ウゥ……ん、どうかしたのか?」

( ^ω^)「ちゃんと確認してなかったの思い出したんですお」

そんな受け答えをしながら封筒からチケットを一枚取り出し、その図柄を確認する。
うん、ちゃんと、コイソラと毛筆で太々と書いてある。

(;'A`)「……なんか、おかしくないか?」

(;^ω^)「……ボクもそう思ったところですお」

――何かがおかしい。
口では上手く言えないが、色々とおかしい。

チケットである事は間違いない。
モギリ用の切れ目も入っているし、印刷もちゃんとしている。

映画館の入り口脇に張ってあるポスターとチケットを何度も見比べる。
そして、タイトルを口にしてみた。

(;^ω^)「こいそら……ですお」

(;'A`)「……だよなぁ」

確かにコイソラではある。
だが、コレだとスイーツ(笑)ではなく甘味(哂)の様な気がしてならない。

( ´_ゝ`)「お前ら、どうかしたのか?」

(´<_` )「チケットに何か不具合でも?」

(;^ω^)「その、これ……」

ボクらの異変を察したのであろう兄者さん達に、チケットを差し出す。
その顔に浮かんだのは――やっぱり困惑。

(;´_ゝ`)「……何だよこれ」

(´<_`;)「恋空は知っているが……濃い空?」

――弟者さんが気付いた。
気付いただけならまだしも、それを口にしてしまった。

('A`)「KY」

( ´_ゝ`)「KY」

( ^ω^)「KY」

(´<_`;)「なっ……」

皆からの罵倒に弟者さんがたじろぐ。
だが、皆から罵倒されるのは仕方の無い事だろう。

この場合の最上は、気付かないフリなのだ。
それを、口にしてしまってはいけないのだ。

二時間を無駄にしたという事実。
それを認めずに済む方法をさりげなく実行すべきだったのだ。

例えば、ここにいてもアレだし、何がおかしいのかマック辺りで考えようぜ。とか。
そう言ってくれていれば――

( ´_ゝ`)「そういやさ、内藤が確認しとけば、こんな事にならなかったんじゃね?」

(;^ω^)「……ォゥフ」

――恐れていた事態が起きてしまった。
兄者さんの言う通り、ボクがちゃんと確認していれば、こんな事にはならなかったのだ。

だからこそ、ボクは気付かないフリをしていた。
何度も見比べ、分からないフリをした。

だが、それも全て徒労に終った。

(;'ω`)「……すいませんお」

(´<_`;)「ま、まぁアレだ。貰った時に、俺らが確認しとけば良かったんだ」

(;'A`)「そ、そうそう。ショボンさんも、こいそらのチケットって言ってたしな」

気遣いが、心に沁みた。
吊るし上げを食らうと覚悟していただけに、余計に。
ただ――

( ´_ゝ`)「えー、お前ら内藤に妙に優しくねー?俺にはすぐ氏ねとかいうくせにさー」

先日の事を根に持っているのだろう、兄者さんだけは不貞腐れていた。

(´<_` )「そう言うな兄者。大体、子供にそこまでの責を負わせるのもどうかと思うぞ?」

('A`)「ガキ相手に責めても仕方ないだろ」

( ´_ゝ`)「お前らな、コイツアレだぞ?ちんちくりんだけど、二十歳超えてるんだぞ」

(´<_` )「しかしだな、見た目が子供だと責め難いとは思わないか?」

('A`)「傍から見たら、大人気ないと思われるだろうしな」

( ´_ゝ`)「けどよ、大人は大人だぜ?見た目だけで判断してたら……」

庇ってくれるのは嬉しい。
本当に、涙が出るほどありがたい。
だけど――

(´<_` )「む?どうした内藤君」

それが悪意の無い言葉だからこそ、ボクはその場にて膝をつく。
善意から出た言葉だからこそ、そのまま前のめりになり――

(  ω )「……ォォォォゥフ」

ボクは、地面に手を突いた体勢で小さく呻いた。
衆人の視線と嘲笑を浴びながら。


~~~


――薄暗い空間。
視線の先には、白くて大きな幕。
そこに写されているのは、新作映画の紹介。

( ^ω^)「そろそろですお」

('A`)「……だな」

( ´_ゝ`)「つーか、濃い空の濃いって何だ。全員顔がクドいのか?」

(´<_` )「内容がいい意味で濃い事を祈るばかりだな」

ボクらがいるのは、恋空(笑)の上映されていたVIP座と比べて、遥かに小さな映画館。
客の入りは七割程度。ソコソコといった所だろうか。

皆、濃い空を見に来たのだろうか。
それとも、恋空(笑)と間違えて見に来たのだろうか。

ボクらから三列ほど前でいちゃついてるカップルは、多分後者だろう。
名前から連想するに、カップルで見る映画じゃない。

いや、ベル薔薇みたいなタイプの濃さだったなら、カップルで見るのもありかもしれない。
非常にどうでもいい事の様な気がしないでもないが。

両隣から、カップル氏ねという怨嗟の声が聞こえたような気がする。
多分聞き間違いだ。

そんな事を考えているうちに、白幕にタイトルが映し出され、濃い空が、始まった。



『濃い空~漢達の見た夕暮れ~』




( ^ω^)―3「嗚呼……腹減ったお……」

腹の底から響く重低音。
身体が空腹を訴えるその音は、嫌が応にも空腹を実感させる。

( ^ω^)―3「しゃあねえ、購買にでも行くかお……」

今は授業中。だが、そんな事などどうでもいい。
クラスメイトの、ああ、またか。という視線を浴びながら席を立ち、教室を出る。

誰とも馴れ合わず、只独り。
己と、その拳のみを頼りに生きる。
それが、己の信念なのだ。

( ^ω^)―3「……チッ」

購買に辿り着いた我が目にしたのは、先客。
しかも、一等気に食わぬ輩。

(,,゚Д゚)「……丁度いいトコにきやがったな」

( ^ω^)―3「……何の話だお」

眼前の、我を睨みつけながら、手で挟むように持ったチョココロネのチョコを舐め続ける存在。
名をギコ云う。このVIP高校で、No2とされる男である。

(,,゚Д゚)「番長さんよぉ……アンタの天下もそろそろおしまいだぜ」

( ^ω^)―3「……自分で番長と名乗った記憶は無いお」

己が口で番長を自称した事など、只の一度も無い。
勝手に回りの者がそう呼ぶのだ。

(,,゚Д゚)「ヘッ……まぁいいさ。今日の放課後、校舎裏に来てもらおうか」

( ^ω^)―3「そいつは、果し合いかお?」

(*,,゚Д゚)「ああ。怖けりゃ、別に逃げてもいいんだぜ」

チョコの味に頬を緩ませながら、そう告げるギコ。
その姿に漢らしさの欠片すら無く。

故に、校舎裏に何が待ち受けているかは容易く予想できた。
しかし――

( ^ω^)―3「……分かったお」

逃げる気など、毛頭無い。
番長の座などに未練は無いが、ここで逃げれば漢が廃るのだ。


~~~


――予想は見事に的中した。我を待ち構えしは百名を超える悪タレ共。
各々の手には木刀、バット、吸水カップ、丸めた新聞紙と、多種多様の凶器。

( ^ω^)―3「チッ……」

(,,゚Д゚)「ヘッヘッヘッ……流石のホライゾンも、この数には勝てはしないだろうよ」

(#^ω^)―3「下種が……」

全員を打ち倒し、ギコを地に這い蹲らせる事は絶望的だろう。
それ以前に、生きて帰れるかどうかすら怪しい。

だが、引きはしない。引けば、己の心は折れる。
漢として、己を許せなくなる事は火を見るよりも明らか。

故に、引かず、媚びず。ただ、拳を握り、横に伸ばす。
それが、構え。己が衝動を形に変えた、己という存在を最大限に生かす構え。

( ^ω^)―3「……行くお」

相手がこちらに飛び掛ってくるより先に駆け、最前列にいた男を吹き飛ばす。
そこから上半身を捻り、そのまま横回転。

二人、三人とその回転に巻き込まれ、吹き飛ぶ。
腹めがけて木刀が飛んできたが、其れは我の身体をすり抜け、後方にいた者に直撃。

( ^ω^)―3「コレだからストⅡをやった事の無いゆとりは……」

ダブルラリアットは飛び道具をすり抜ける事すら知らないから困る。
と言葉を続けながら、更に数人をなぎ倒し、吹き飛ばす。

直後、後方より己の足を狙った、バールのような物の一撃。
だが、其れは空を切った。

( ^ω^)―3「キック三つ押し舐めんなお」

ハイスピードダブルラリアットは足元無敵なのだ。
それが分からぬ輩の顔に拳の側面がぶち当たり、その身体を薙ぎ倒す。

そのまま、半数ほどを打ち倒した時――

(,,゚Д゚)「隙ありって奴だよなァァァァッ!」

技の終わり際を、ギコに狙われた。
感じたのは、大胸筋ごと引きちぎらんばかりに、強烈に吸い付く吸水カップの感触。
その威力に身体が耐え切れず、唇の端から一筋、血が漏れる。

(;^ω^)―3「グハッ……」

(,,゚Д゚)「オラお前らッ!フクロにしちまえェェェェッ!」

号令を引き金に、己へと向けて、ギコの配下が殺到。
その者達の目は血走り、集団であるが故に暴走をした感情を窺わせていた。

腹部、顔面、頭部、股間乳首股間菊門股間玉裏股間首筋に絶え間なく衝撃と愛撫。
鈍器で殴られ、味噌の付いた靴で蹴られ、チョコを舐める様に乳首を舐められる。

己が意思に反して身体は崩れ落ち、頬が土に触れる。
やがては意識も遠のき――

「おまいどんは何ばしよっとか!」
(訳:お前ら何してやがる!)

独特の響きを持つ声に、意識を引き戻された。

(,,゚Д゚)「ああん!?誰だテメェは!」

(#'A`)「オイがだいかとかどがんちゃよか!あいたい!おいは卑怯モンはゆるせんったい!」
(訳:俺が誰かなんてどうでもいい!アレだ!俺は卑怯者は許せねえんだよ!)

突如現れ、五十人近い相手に大見得を切ったこの男。
身体が大きい訳でもなく、得物を持っている訳でもない。

しかし、その目に輝くは熱き義侠の心。
卑劣を由とせず、故に、己が身を死地へと赴かせる事を躊躇わず。

視界の端にて堂々と立つ、男。
その者は、まさに漢であった。

(メ^ω^)―3「……余計な節介はやめるお」

だが、己が口から吐き出されたのは、そのような言葉。
一人の漢として、他の漢に情けを掛けられる訳には行かぬのだ。
他の漢に恩を着せられる事など、御免なのだ。

(#'A`)「きさんは何ば言いよっとか!そがんぐちゃぐちゃなっとっとけ、ふうけた事言うなさ!」
(訳:テメェ何言ってんだ!そんなボロボロになってるってのにふざけた事言うな!)

(#^ω^)―3「誰がボロボロだお……俺はまだ本気出してないお」

そんな言葉を吐きながら全身に力を込め、ふらつきながらも立ち上がる。
余力など、全く残っていない。だが、意地で立つ。
漢たる者、他の漢に情けない、無様な姿を見せる訳には行かぬのだ。

(#'A`)「あーもっ!そいぎあいたい!オイは勝手にすっだけたい!」
(訳:あぁ糞ッ!それじゃアレだ!俺は勝手にするだけだ!)

己が立つより先に、乱入してきた漢が敵の中へと飛び込んでいく。
やはり、というところだろうか。その拳の一振りで五人の雑魚が星になった。

(メ^ω^)―3「チッ……勝手にしやがれお」

己は気付かなかった。
悪態を吐きながら駆ける己の口の端が、いつの間にか上がっていた事を。

――そして、幾度かの諍いの後、己とそいつは、友となった。
強敵と書いて、とも。只一人、己が心の内を吐露する事の出来る存在となっていた。

――だが、その関係は長くは続かなかった。
己が共であるドクオが、病に倒れたのだ。

(ヽ'A`)「チッ……オイとした事が情けなかばい」
(訳:チッ……俺とした事が情けねぇ)

無菌室に隔離され、見る影も無いほどに痩せ細ってしまったドクオ。
己が何も出来ない事が、無力である事が悔しかった。

(  ω )―3「俺は、無力だお」

(ヽ'A`)「内藤……」

そのか細い呟きの後、己の頬に、何かが触れた。
それがドクオの拳だと、己は気付けなかった。

それほどまでに、衝撃も、重さも、無かった。
だが――否、だからこそ、その拳は、今までに喰らったどんな一撃よりも、痛かった。

(ヽ'A`)「キサンには、情けば掛けられとうなかったい」
(訳:お前には、情けを掛けて欲しくないんだ)

(  ω )―3「……」

言葉は、出なかった。

そして――

――己はドクオを背負い、夕焼けに染まりながら、河川敷を歩いていた。
背中の女子程の重みが辛く、苦しかった。

だが、その意を口にする事は無い。
涙を、流す訳にはいかぬ。

コレが、最後なのだ。最初で最後の、漢と漢の果し合い。
ドクオの望みであるそれを、果たさねばならぬのだ。

(ヽ'A`)「ここらで、よかごたね」
(訳:ここらで、よさそうだな)

(  ω )―3「俺も、そう思うお」

ドクオの言葉に従って、川原へと降り、向かい合う。

(ヽ'A`)「ちゃんとケリばつけんぎんた、死んでも死にきらんたいね」
(訳:キッチリケリつけねえと、死んでも死にきれねえからな)

(  ω )―3「お互い、情けは無用だお」

返事は、無い。
眼前に立つ幽鬼の如き相貌のドクオは、ただ、己を見据える。
言葉は不要。言葉を放つ力さえも、果し合いに込めたいのだろう。

(  ω )―3「……」

(ヽ A )「……」

互いに頷き、同時に駆け、全く同じ挙動で拳を振り上げる。
そして、拳が顔面にめり込んだ瞬間すら全くの同時。
共に弾かれ、吹き飛び、地面に背を預ける。

己の一撃は、全身全霊を込めた一撃だった。
ドクオの拳には、それよりだけではなく、残された生命全てが込められていた。

(  ω )―3「……」

(ヽ A )「……」

川原に寝そべったまま、己もドクオも立ち上がらない。

(  ω )―3「ドクオ……テメェといれて、楽しかったお」

(ヽ A )「……」

コレが敗北か、と思う己の心があった。

(  ω )―3「テメェの分も……俺が生きてやるお」

(ヽ A )「……」

もう、勝てぬ相手なのだな、と思う己の心があった。

( ;ω;)―3「……」

ただただ、流すまいと誓ったはずの涙が、己の心を代弁するかの様に、両の眼から溢れ出していた。
そして――

( ;ω;)―3「ドクオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」

もう届かぬ場所へと行ってしまった者への叫びが、夕焼けに染まる川原に響いた。

――時が、過ぎた。

( ^ω^)―3「やっぱ、シャバの空気はうまいお」

己はあの後、ドクオを抱えて警察へと出頭した。
そして一言、己が殺した。と告げた。

如何なる理由、友が望んだ事であれ、己は友を手に掛けたのだ。
捕まる事は、元より覚悟の上であった。

( ^ω^)―3「ここらも、あまり変わってねえお」

己が刑務所に入る前と、何も変わっていない。
店が変わっていたり、道が綺麗になっていたりはするが、町並みは変わっていない。

そんな事を考えながら己は歩く。
向かう先は、友の最期の場所。

( ^ω^)―3「……」

ふと、立ち止まり思う。
己はその場所に立った時、何を思うだろうか。
懺悔?後悔?それとも、先に天へと還ってしまった者への憤怒?

予想はいくつも浮かぶが、どれを思うかなど、その瞬間にならなければ分からない。
己はまだ、その場所に立っていないのだ。

だが、断言できる事が一つだけある。
己は、あの場所に立った時、誓うだろう。

己が道を貫き通して見せる、と。

( ^ω^)―3「伝説を土産に持ってくから、そっちに行くまで楽しみに待っとけお」

己は再び道を歩き出す。
あの時と変わらぬ、夕焼けの光を浴びながら。




『糸冬』




――白幕でスタッフロールが流れる。
エンディングテーマ曲「STAND UP TO THE(ry」と、すすり泣くような声の響く場内。

(  ω )「……」

その中で、ボクは、呆然としていた。
理不尽で、無茶苦茶で、最初から最後まで訳が分からなかったコレ。

何故か、胸が熱かった。
こみ上げるものがあった。

( ;ω;)「……」

其れはやがて頬を伝い、跡を、残した。

――劇場の外の街は、奇しくも夕焼けに染まっていた。
劇場を出た者皆が人目を憚らず涙を流し、大きな声で感想を口にしていた。

( ;_ゝ;)「俺は今ッ!猛烈に感動しているッ!」

(;<_; )「コレが……甘味(哂)と言う奴なのか……」

(;A;)「チキショウ!夕日に向かって走りたい気分だぜ!」

ドクオさんの言葉に、皆の視線が集まる。
きっと皆もそう思ったのだろう。
もちろん――

( ;ω;)「走るならボクもお供しますお!」

( ;_ゝ;)「おっと!俺も行くぜ!」

(;<_; )「嫌とは言うまいな!」

――ボクらも例外ではない。

(;A;)「テメェら!俺についてきやがれ!」

その言葉を合図にボクらは走り出す。
どこまでも、どこまでも、ずっと、ずっと――






(;^ω^)「……ここ、何処ですかお……」

(;´_ゝ`)「適当に走ってきたしなぁ……」

(´<_`;)「うむ……真っ暗、だなぁ……」

(;'A`)「……スマン」

二時間後、ボクらは、見事に道に迷っていた。

第六話『副題:人は道に迷い、惑う』糸冬



~良い子の必殺技講座第六回~

川 ゚ -゚)「今回は必殺技の紹介の代わりに『濃い空』の紹介だ」

川 ゚ -゚)「あれだ、恋空(笑)のパクr(ry」

川 ゚ -゚)b「多分問題ない!」

川 ゚ -゚)b「問題ある場合、多分>>1のひとりまとめが消されるだけだ!」

川 ゚ -゚)b「同じ哀島だしな!」

川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ -゚)「……サイト作り直すのは面倒くさいなぁ」

川 ゚ -゚)ノシ「という訳で、次回もSTAND UP TO THE VICTORY!」

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Author:ひちょりまちょめ
コテ酉無しです。
でも一話の最後見たらすぐ分かる仕様です。

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