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从 ゚∀从達 は闘争の中でこそ輝くようです  第二話

第二闘争ッ!

『セール時のデパートッ!其れは女の戦場ッ!』

――闘争開始ッ!
――六月某日、日曜。午前九時五十七分。
空にて燦々と輝く太陽は、その下に生きる者に春の終わりと夏の始まりを感じさせる。

殺意を覚えるほどに眩しい太陽の下、街の郊外に在る妙に大きなデパートGATIMUTI。
その入り口には、女性の割合が妙に多い長蛇の列。

ひしめき合い、開店を今か今かと待ち続ける客の先頭には、

从 ゚∀从 「開店前の待ち時間って、なんでこんな長く感じるんだろーなー。ちょーなげー」

上下共に学校指定のジャージという出で立ちで、屈伸運動を続ける一人の女性。
彼女の名はハインリッヒ高岡。
靴はその服装に相応しい、学校指定のMOONSTAR製運動靴。

ハインリッヒは一人でいるが、決して友達がいない訳ではない。
一般的に見ると少ない方かもしれないが、決していない訳ではない。
そう――決して零ではないッ!一桁だが零ではないッ!

ハインリッヒ高岡は、伊達や酔狂でこの様な真似をする乙女ではない。
敢えての一人買い物には、ちゃんと理由があるのだ。

从 ゚∀从「ちと寂しいが……敵は一人でも少ない方がいいってな」

彼女の心は目覚めた時より既に臨戦態勢。
友人と楽しくショッピング、などと抜かす腑抜けた心は家に置いてきている。

心の隠し場所は台所の戸棚の奥。
おやつの饅頭を一緒に置いているので、忘れる事は無い。
乙女たるもの心を隠したまま忘れても、お菓子の隠し場所は決して忘れはしないのだ。

从 ゚∀从 「よいっしょ、よいっしょ」

人の眼も気にせずラジオ体操第二に突入したハインリッヒの右手には、春物処分大セールと書かれたチラシ。
彼女はこの日、初デート用の勝負服を買いに来たのだ。全ては愛しき先輩の為に。

因みに、彼女は先輩とやらとは付き合ってはいない。
告白すらしていない。そもそも登場すらしていないし、下手すれば相手は彼女の事を知らない。
が、妄想するだけなら罪は無いのだ。


――ハインリッヒより十人ほど後方。
そこには濃霧の如き蒸気に身を包み、キャミソールを肉に食い込ませた肉塊の姿。

川;^ω^)「……暑いのは嫌いだお」

その表面に浮き出る肉汁の副産物であろう蒸気に、周囲の客が顔を歪ませる。
肉塊はそれに気付かない。その太さは性格と正比例しているのだ。

川;^ω^)「……やっぱ、足りなかったお」

ホライゾ美の腹から、地の底より響くが如き轟音。
彼女の本日の朝食は塩鮭二尾、ご飯三斗。
常人には完食不可能と思われるその量は、ホライゾ美の休日に於ける朝食量の半分以下。

減食の理由、それはこの場所に並ぶ為である。
肉塊ことホライゾ美は、満腹になった瞬間より、再び空腹を覚えるその時まで眠り続けるのだ。

川;^ω^)「……汗でべたべたするお」

ホライゾ美は、ダイエットをしようなどとは微塵たりとも考えない。
彼女は運動と減食が、世界で何より嫌いなのだ。
怠惰ではない。ありのままの自分が大好きなのだ。

川;^ω^)「ふふっ……」

空腹の苦痛を堪えながら、内藤ホライゾ美は不敵に笑む。
細められた眼が現実を映す事を忘れてしまったのは、いつの頃からであろう。
己の尻を、どう足掻いても拭けぬと自覚した時ではなかったか。

ホライゾ美に自身の体、その残酷な現実は見えてはいない。
彼女の眼に映る己の身体は、1:1.618の黄金率に支配された神々しい肉体。

川;^ω^)「このデパートには私の眼に叶う服はあるのかお?」

故に、気付かない。
己の肉が収まる服は、特注品でもない限り存在しない事を。


――肉塊より更に七十三人ほど後方。
そこには並び立つ二人の女性。
一人は、黒を基調に白いフリルでアクセントを添えた、所謂ゴスロリと云われる服装のショボ代。

ξ*´・ω・`)ξ「女性の群れだなんて、それだけで濡れるわ。ぐちょぐちょだわ」

顔が紅潮しているのは、暑さだけが理由ではないことは確か。
そしてもう一人、頭の両サイドに触角を生やした、黒のタンクトップに迷彩柄短パンのギ子。

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「うわっ!あの肉ないとーらよな?」

限界までパンツイン、且つ、白のハイソックスにスニーカーというまさに小学生スタイル。
だが本人は周囲の目など気にしていない。周囲の者も、年相応と見ているのか全く気にしない。
なので何も問題ない。

ξ´・ω・`)ξ「見ちゃ駄目よ、肥満が転移するのよ。危ないのよ」

二人の場所は最後尾に近い。
だが、セールに余り興味の無い二人からしてみれば、そんな事など些細な事に過ぎず。
二人は開店待ちの会話を楽しんでいた。

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「ねーねーショボちゃんショボちゃん。パンツほんとにあんの?」

ショボ代の裾を引きながらギ子はその顔を見上げる。
彼女はここなら可愛いパンツがある、と聞かされて買いに来たのだ。

ξ*´・ω・`)ξ「ええ。だから、一緒に試着室で着替えっこしましょ。そうしましょう」

そう返すショボ代の視線は、ギ子のタンクトップの隙間から見える桃色ミステリーサークル。
彼女は生まれて初めて、このまま時が止まればいいのに、と心の底から思っていた。


――二人組より八十二人ほど前方に、半径二メートルの空間。
そこには、秋葉原人(ヲタンチュ)とプリントされたTシャツを着た一人の男。

(;'A`)「なんで、こんなに人が……」

彼の名はドクオ。由緒正しき血筋の不細工。
パンツは裾を幾度も折り曲げたケミカルウォッシュジーンズ。靴はもちろんDUNLOP。

ドクオは予想以上に増え続ける開店待ちの客にうろたえる。
その様は、全く知らない歌手のライブ会場に紛れ込んだお母さんの如く。
今にも「モーニング娘。のオーディションがあるって聞いたんですけどー!」と叫ばんばかり。

(;'A`)「どうしよう……」

ドクオの周囲には謎の空間が出来ているが、其処より外には大量の人。
其処からは汚物を見下すような視線が、四方八方より彼を穿たんばかりに放たれる。

人ごみを嫌う故に、人が少ないであろう開店直後を狙った彼からすれば、まさに誤算。
古ぼけた本屋にエロ本を買いに行ったら、レジが可愛い女の子だった時と同等の衝撃。

ドクオの心は絶望に染まり、その頭は列から抜け出そうと考える。
だが、ドクオの意思とは裏腹に、その足は微塵たりとも動かない。
視線を浴びる事に不慣れな身体がすくみ上がり、脳から送られたあらゆる電気信号を拒絶したのだ。

(;'A`)「……帰りてぇ」

其れは、動けなくなった彼の、心からの言葉であった。


――正面玄関が開き始めたのは、時計の分針が九時五十九分を刻むと同時。
その奥より現れたのは、数名の店員を引き連れた、三十代から四十代と思われる白いタキシードの男性。

从 ゚∀从 「……相変わらずやべぇ面だよな……」

( ФωФ) 「諸君。本日の来店、心の底より感謝する」

低く、独特な抑揚の効いた声。
年齢とは不釣合いな、老獪さすら感じられる面構え。
そして、とても堅気とは思えない服装。

厳格且つ威圧的な、他者を寄せ付けぬ雰囲気を纏った男の名は、杉浦ロマネスク。
小足見てから昇竜で余裕でした。と事も無げに言い放つこのデパートの支配人である。

( ФωФ)「……」

店員達を背後に従えたロマネスクが、周囲を一瞥した後、列より幾らかずれた方向へと視線を向ける。
その視線の先には、休日であると言うのに制服を纏った一人の女子高生。

川 ゚ -゚) 「……」

ヾ(*ФωФ)シ「……」

視線が重なった瞬間、ロマネスクの鼻腔から熱気。
それと共に彼女の方へと拳が突き出され、その上方、親指が天に向けていきり立つ。

ヾ(*ФωФ)b∑「……」

川 ゚ -゚)b ∑「……」

同じくらいの勢いで親指を立て返した彼女は、ロマネスクの一人娘であるクー。
似たような人を寄せ付けぬ雰囲気を纏っている辺り、流石は親子といったところだろうか。

(*ФωФ)「……」

視線を正面に戻したロマネスクが服装を整える。
そして、大きく息を吸い込んだ。
客はその姿を一丸となって見守り――

(#ФωФ)「我輩は――デパートGATIMUTI支配人ッ!杉浦ロマネスクであるッ!」

从*゚∀从「キタ――――从*゚∀从 ――――ッ!」

川*^ω^)「食い物カモ――――川*^ω^)――――ン!」

ξ´・ω・`)ξ「あらあら、コレは予想外ね。奇想天外よ」

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「ねぇねぇ、これなーに?すげーの?」

――鼓膜を破らんばかりの怒声の直後、全員が歓声を上げた。
一喝の意味を知るものならば無理も無い。
ロマネスクの一喝、それが意味するのは――

(#ФωФ)「本日の春物処分セールはッ!表示価格より更に五割引であるッ!」

当日告知ゲリラセール。
しかも、今日はまさかの五割引き。

娘に頑張る自分の姿を見せたいのだろう。
ロマネスクの声からは凄まじいやる気が感じられる。

(#ФωФ)「これよりデパートGATIMUTIは戦場と化すッ!覚悟は宜しいかッ!?」

その問いに、客全員が掛け声と共に拳を振り上げる。
熱気に包まれた客の様相は、まるで煽動される暴徒の群れ。

从*゚∀从「ウッヒョ――――从*゚∀从 ――――ッ!」

川*^ω^)「まぁ、これはこれで……余ったお金でお菓子が買えるからいいお」

ξ´・ω・`)ξ「あらあらあら。私も何か買おうかしら。お買い得かしら」

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「ねぇねぇ、ごわりびきって何らー?」

(*ФωФ)「……フッ」

ロマネスクはその光景に思わず頬を染める。正直気持ち悪い。
彼の心は今、喜びに満ち溢れている事だろう。
しかしながら気持ち悪い。

客の喜ぶ姿こそがロマネスクが働く上で、至上の喜び。
お客様は神様です。その言葉こそが彼にとって至言なのだ。

(#ФωФ)「では諸君ッ――デパートGATIMUTIコレより開店ッ!各自の健闘を祈るッ!」

从#゚∀从 「よっしゃぁぁぁぁっ!」

(#)ωФ)「ゲドラフッ!」

言い終えると同時にロマネスクが宙を舞った。
殺到する客、主にハインリッヒに跳ね飛ばされたのだ。

ヽ( #)ωФ)ノ「ふぁぁぁぁんたすてぃぃぃぃぃっく」

宙にてくるり、くるり、と高速旋回するロマネスクの脳裏を走馬灯が巡る。

それは主に、隣家に住んでいた二歳年下の幼馴染との思い出。
草スキー場にサーフボードを持ってきた幼馴染。

家に一人取り残され、幼馴染の家で食べた彼女の手作り料理。
主食がご飯でおかずがドリアとライスサラダ。
あと鮒寿司。

告白した時の、青筋を立てた幼馴染の鬼気迫る表情。
全て糊付けされていた交換日記の幼馴染のページ。
子供が生まれた時、正直爆発するかと思った。と呟いた、そんな幼馴染且つ嫁。

嫁の群れがロマネスクの脳裏を駆け巡る。
その数は億を遥かに超え、兆にさえ届き、やがては京にさえ及ばんとして――

( #)ω )「……」

幸か不幸か、地面に激突する寸前、ロマネスクは考える事を止めた。
余りに増えすぎた脳内の嫁を処理しきれなくなったのだ。

川*つ-゚∩「これが……男女の営み……ゴクリ」

その時クーは、偶々目に入った猫の交尾に夢中になっていた。

川*∩゚ -゚∩ ハッ……父様はどこに……」

彼女が視線を戻した時、既に父の姿は無く。
クーには、何が起きたのか一切理解できなかった。


そして、ハインリッヒより幾らか後方では、

(#)A゚)「アインラッドドドドドドドドド――」

後ろからの人の群れに押されて転倒したドクオが、あらゆる人から踏まれ続けていた。
幾度も踏み躙られた後、蹴飛ばされ、跳ね上げられた彼は、

(*#)A゚)「――ドドドドドライセンッ!」

宙を舞いながら己の股間に熱を感じ、自分はマゾだったのか、と一人納得するのであった。

――ドクオは気付いていない。
踏み躙られ、蹴飛ばされる度に眼に映った下着の数々。
その全てを無意識の内に捉えていた事を。

つまり、蹴られた事は何ら関係無い。
ドクオはただ下着に反応しただけなのだ。

~~~

――先頭であるハインリッヒが建物内に足を踏み入れる。
デパート内に並んでいた店員が、一斉に口を開いたのはそれと同時。

( ^o^)^o^)^o^)「「「いらっしゃいませ!ゆっくりしていってね!」」」(^o^(^o^(^o^ )

从#゚∀从「うるせぇぇぇぇっ!」

はつらつとした挨拶に文句をつけながらハインリッヒは駆け抜ける。
その後を続くは数名の女性客、そして――

川;^ω^)「ふひっ、ふひっ、あっついお!」

( ^o^)^o^)^o^)「「「うわぁ!ゆっくりしね!」」」(^o^(^o^(^o^ )

――店員を跳ね飛ばしながら、その体格に似合わぬ速度で駆けるホライゾ美。
デブの瞬発力を舐めてはいけない。
デブと云う存在は、常に脂肪と云う重りで己の体を鍛え続ける存在なのだから。

ξ´・ω・`)ξ「あらあら。我欲に溺れた人ってどうしてこんなに醜いのかしら。何故かしら」

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「ショボちゃん時々分かんない事言うよねー」

それより後方の玄関でゆるりと歩む二人は、完全に蚊帳の外。
後方の客が彼女らの横を駆け抜けるが、それを気にする事無く、マイペースに進む。

ξ´・ω・`)ξ「そうかしら?それより、はぐれないように手を繋ぎましょ。そうしましょ」

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「うん!」

ξ*´^ω^`)ξ「うふふふふ……」

そんな和やかな二人の眼前、先頭集団が向かう先はエスカレーター。
エレベーターも存在はするが、その場所は正面玄関から遥か遠く。

対するエスカレーターはすぐ傍に存在する上に、三階まで登りきったならセール会場はその目の前。
しかも、上に向かうエスカレーター上で駆ければ速度は更に跳ね上がる。

だが、エレベーターはどんなにボタンを連打しようとも、何も変わりはしない。
更に言えば、他の客が二階を押した瞬間に全ては脆く崩れ去る。

その果てに待つのは、売れ残りを漁る事しか出来ぬ敗北者としての未来。
つまり、一分一秒が惜しいこの状況でエレベーターに乗るは愚の骨頂なのだ。

しかし、

川;^ω^)「ふびっ、ぶふぅ、ふひぃ!」

从;゚∀从 「なっ!?あの豚も来てんのかよ……なら……」

背後に迫るホライゾ美の存在に気付いたハインリッヒはエスカレーターの隣、階段を選択。
後に続く女性客はその意図に気付く事無く、エスカレーターを駆け上がる。

そして、エスカレーターに乗れぬホライゾ美が手すりの上を数メートル駆け上がった時、

川;゚ω゚)「ぶひょぉぉぉぉぉっ!」

ハインリッヒを除く先頭集団を巻き添えに、エスカレーターが崩落した。
あくまでも常人の体重を想定したそれが、ホライゾ美の体重に耐えられる訳がなかったのだ。

从 ゚∀从「よっし!コレで独走じゃ……え……?」

階段の半ばで崩落の様を拝もうと足を止めたハインリッヒの顔が引き攣った。
その耳に届いたのは、大質量の何かがずれる音。
断続的に、徐々に大きくなっていくその音に、彼女の顔から血の気が引いていく。

从;゚∀从「うおぉぉぉぉぉぉっ!」

必死に駆け上がるハインリッヒを追う様に、その靴裏のあった場所が崩落を開始。
エスカレーターが崩落したならば、当然隣接する階段にも被害が及ぶのだ。

从;゚∀从「あーいきゃーんふらぁぁぁぁい!」

ハインリッヒが二階フロアへと飛び上がった直後、階段は完全に崩落した。
まさに危機一髪であった。

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「うっわー!えーがみてー!」

ξ´・ω・`)ξ「危ないからあっちのエレベーターから行きましょ、そうしましょ」

阿鼻叫喚の地獄絵図と化したその場所を横目に、エレベーターへと向かう二人。
彼女らのいる場所だけは、とても平和だった。


从;゚∀从 「うっわー」

セール会場に向かう事も忘れてハインリッヒは一階を見下ろす。
彼女の視界に広がるのは瓦礫。
中心には何が埋もれているのか、一際高く積まれた瓦礫の山がそびえ立つ。
それが、

从;゚∀从「……あ?」

低く鳴動し始めたのはその直後。

从;゚∀从「な、なにが起きるってんだ……」

川 ;゚ -゚)「私にも分かりかねますが……とてつもなく嫌な予感がします」

从;゚∀从「アンタもそう思うか……アレは一体……」

二人の視線の先、瓦礫の山は唸りを上げながら、震え続ける。
やがて山は崩れ始め、隙間より蒸気を放ち始めた。
その様はまるで、目覚めてしまった火山の如く。

从;゚∀从「こ、これはまさか……」

川;゚ -゚)「知っているのか雷電!?」

从;゚∀从「何となく言ってみただけだ……全く以って何が何だか……」

川;゚ -゚)「なんと……」

二人がそれに目を向けたまま会話を続ける間も、崩壊の勢いは増していく。
そして、瓦礫が完全に崩れ去り、内包された存在が蒸気の内より現れた。

川 ;ω;)「今のは怖かった……怖かったおー!お母さーん!怖かったおーんおーん!」

从 ゚∀从「なんだ、内藤か」

川 ゚ -゚) 「なるほど。アレは内藤という生き物なのですね」

泣き叫ぶホライゾ美を見下ろしながら、二人は心の底から納得した。
内藤じゃあ、仕方ないな、と。

しかたないじゃない、ないとうだもの
byヽ川 ゚ -゚)人从∀゚ 从ノ

从 ゚∀从「あーあ、無駄な時間食っちまったな……あ?」

川 ゚ -゚)「全く以ってその通りです」

言葉と共に、ハインリッヒの隣に立つクーが深く頷く。
そしてクーが顔を上げた時、

从;゚∀从「何でクー先輩が隣にいるんだよぉぉぉぉッ!」

ハインリッヒは踵を返し、三階に続く階段へと踏み出していた。
まさに脱兎の如き初速だった。

が、クーの右腕は既にハインリッヒの奥襟を掌握。

从;゚Д从「ぐへぇっ!」

川 ゚ -゚) 「……甘い。実に、甘い」

クーはシャツの襟でハインリッヒの気道が絞まるのも構わずに、彼女を引き寄せる。
そして、ハインリッヒが抗うより先に左腕をその首に絡め、掌にて右肩を掴み、

「逃がす訳、無いでしょう?」川::::从;゚∀从

耳元で、優しく、囁いた。

川::::从;゚∀从 「ぉぅじーざす……」

その一言、只一言でハインリッヒは恐怖に縛られる。
優しげな声。だからこそ、恐ろしい。
優秀な狩人は仕留めるその瞬間まで、殺気を微塵たりとも放たないのだから。

彼女の不覚は、クーの接近に気付けなかった事。
それに尽きるだろう。

「貴方の格好は学校指定の物ですので、特に問題ありません。しかし……」川::::从;゚∀从

言葉を続けながら、クーはハインリッヒの身体に視線を這わせる。
その視線は、まるでハインリッヒの肢体を値踏みするかの様。

川::::从;゚∀从「……」

ハインリッヒは全身が粟立つのを感じた。
ついでに、自分の中で百合の門が開かれそうな予感を覚えていた。

「我が校の生徒が、この様な場所で走り回るとは全く以って嘆かわしい」川::::从;゚∀从

川::::从;゚д从「ああああの、明日なら幾らでも聞くんで今日はコレくらいで……」

ハインリッヒは自身の声の震えも構わずに、クーを説得しようと試みる。

だが、

川::::从;゚ д从「で……で……」

口は、彼女がクーの方へと視線を動かすと同時に固まった。
その目が、憤怒の形相のクーを直視してしまったのだ。

川 ゅ _ゅ)「無理、ですね。風紀副委員長補佐代理見習いとして、見逃す訳にはいきません」

ハインリッヒを睨みつけるのは、憤怒に歪む二つの眼。
それは、クーの父親であるロマネスクと瓜二つ。

絶対に似てはいけない部分が似てしまったのではないだろうか。
しかし、神とは、時に残酷な事をする存在なのだ。

~~~

ξ*´゚ω゚`)ξ「コレは歴史的瞬間なのよ!脳汁垂れ流しなのよ!」パシャパシャ

ベストポジションを模索しながらシャッターを切り続けるショボ代。
カメラは商品を勝手に持ち出したものである。

(;><)「お客様勘弁してくださいなんです!それは売り物なんです!」

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「お兄ちゃんちゃっくあいてるー!」

(;*><)「ああっ!そんな所もっと見て……見ないでほしいんです!」

(*゚ω゚ *) 「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ!」パシャパシャ

(;><)「副主任までカメラでパシャパシャしないでください!主任助けてほしいんです!」

(*<●><●>)「ふふっ……買い取らせれば問題ないことは分かってます」パシャパシャ

(;><)「主任まで……でも商品にはメモリー入れてないんです!撮っても保存できないんです!」

ξ*´゚ω゚`)ξ「……え?」

(*゚ω゚ *) 「……ぽ?」

(*<○><○>)「なん……だと……」

~~~

lw´- _-ノv 「」……

デパート一階トイレの前で、黙したまま立つ一人の女性。
少し離れた場所より聞こえる騒音を気にも止めず、ただ、男子トイレと女子トイレを交互に見比べる。

lw´- _-ノv ……私はどっちに入るべきなのだろう「」

普通ならば迷わず女子トイレに入る所なのだろうが、彼女は常識に囚われない思考の持ち主。
故に、台詞を括弧内に収めるという常識に囚われる事もなく。

lw´- _-ノv…「」…

彼女は再びその口を噤み考える。
身も心も女である事を考えれば、女子トイレが正しいのかもしれない。
だが、家で一人の時などに中年オヤジごっこを嗜んでいる事を考えると、男子トイレも有りなのだろう。

それに、彼女の好きな食べ物の組み合わせは握り飯と冷酒。
ああ、いい感じにおっさん臭いではないか。

だが、彼女には大事な物が不足している。
足りない物、其れは無精髭。
無精髭こそおっさんの必需品だろう。

「」lw´- _-ノvはてさて、どちらが……

不意に言葉を止め、視線を横へと向ける。
その視線の先には、ボロボロになった不細工、ドクオの姿。

(*#)A`)「あ、あの……ちょっとどいてもらえませんか?」

「w´- _-ノvおお、コイツは失敬」

(*#)A`)「……ちょっと失礼します」

生きた前衛芸術め、と思いながら、彼女は素直にトイレへの道を空ける。
そして、ドクオ背中が男子トイレに消えたのを確認すると、再び思考に耽り始め――

(#)A゚)「彩られた左腕よッ!愚息を擦り上げろ――ドクオ・ザ・マニキュアペインツレフトォォォォォッ!」

――直後、トイレが爆発した。

lw´「- _-」ノv……

男女の境の無くなったトイレ。
彼女は瓦礫の積み重なった内部に視線を巡らせた後、天啓を得たかの如き表情で指を鳴らす。

「w*´- _-」vおお、コレなら何も問題ないじゃないか

そして嬉々として踵を返すのだった。
彼女は別にもよおしていた訳ではない。
冷やかしに来たはいいが、少し人生に迷ってしまっただけなのだ。

~~~

川ゅ_从;゚ д从「……」

ハインリッヒは歯の根が合わぬ程に震え上がる。
階段跡から這い上がる者達を見る余裕すらなく、闘争の最中にある事さえ忘れていた。

川ゅ_从;゚ д从「こわいよぉ……おかぁさぁん……」

「大丈夫、酷い事はしませんから」川ゅ_从;゚ д从

川ゅ_从;゚ д从「でもこわいよぉ……せんぱいのおめめがこわいよぉ……」

そう言いながらも、ハインリッヒは視線を逸らそうとはしない。

否――逸らせないのだ。今の彼女は、蛇に睨まれた蛙。
眼を逸らした瞬間、酷い目に遭わされるのではないかと、疑心暗鬼に陥っているのだ。

「今……何と言いましたか?」川ゅ_从;゚ д从

言葉の後、ハインリッヒの背後で、何かが軋みを鳴らす。
その音は、油の切れた歯車の軋み、そう、ギギギ、と聞こえた。
彼女の視線の先で、クーの黒い瞳から光が消え、深みを増す。

「もう一度、言って御覧なさい?」川ゅ_从;゚ д从

川ゅ_从;゚ д从「な、ななんにも……」

ハインリッヒの言葉は要領を得ず、その目尻には涙が浮かぶ。
彼女はこれほどの恐怖など体験した事がないのだろう。

校則を絶対正義と称する、風紀副委員長補佐代理見習いクー。
彼女自体が既に、遅刻常習魔のハインリッヒにとって天敵である。

更には、クー生来の、心の内まで見抜かんばかりの鋭い目。
その目が憤怒に歪めば、人を視線で射殺さんばかり鋭利さを得るのだ。

「言葉はハッキリと言う様に、と先生から習いませんでしたか?」川ゅ_从;゚ д从

川ゅ_从;゚ д从「な、ならいました……」

「そうですか。では、先程の台詞をもう一度、ハッキリと言って御覧なさい?」川ゅ_从;゚ д从

川ゅ_从;゚ д从「…………怖いです。先輩の目が怖いです」

そう言い切ったハインリッヒの足は、世に生を受けたばかりの子牛の如く、頼りなく震える。
大きくなったら食べられてしまう辺りも一緒かもしれない。食べるの意味は違えども。

「ちゃんとハキハキと言えるじゃ……」川ゅ_从;゚ д从

唐突に言葉が止まる。
二人の耳から周囲の音が遠のいていく。

ハインリッヒの耳に届くのはクーの呼吸音。
そして、クーの耳に届くのはハインリッヒの激しい鼓動。

緊張を強いられ続け、いつ限界が来てもおかしくないハインリッヒ。
ハインリッヒにほぼ密着した体勢で、体を震わせるクー。

「……」川;゚ -从;゚ д从

不意に、クーの腕から力が抜けた。

从;゚д从「……うぇ?」

ハインリッヒが呆けた表情を浮かべた時、既にクーは後方へと跳躍。
後、アクロバティックな挙動で数人を踏み台にしつつ、ハインリッヒとの距離を取る。

しかし下着は一瞬たりとも晒してはいない。
風紀副委員長補佐代理見習いとして、みだりにその様な物を晒す訳には行かないのだろう。

从;゚д从「あ、あの……」

川;゚ -゚)「ぬ……ぐ……デュワッ」

クーはおどおどと歩み寄るハインリッヒに対し、ウルトラマンの構えを尻込みさせたような格好で威嚇。
その姿に、つい先程の様な威圧感は微塵たりとも存在しない。
そして、クーの行為に理解に苦しむハインリッヒが更に歩み寄った時、

从;゚д从「あの、クー先輩……」

川*゚ -゚)「……いけません。その様な事は、不埒ではしたないのです」

何を勘違いしたのか、クーは胸を両腕で隠しつつ、頬を染めた。
その行為にハインリッヒは更に混乱するが、構う事無く彼女は言葉を続ける。

川*゚ -゚)「我々は高校生、勉学を優先すべきなのです。それに生徒手帳にも――」

从;゚д从「いや、だからもう…………?」

ハインリッヒの視線はクーの頭上。
そこには何処からとも無吊り下げられた裸電球。
其れは――磐石すら覆す閃きの象徴。

裸電球が閃光を放つと同時にクーのニ指が煌めき、 胸ポケットより何かを抜き放つ。
彼女のニ指に挟まれた物、それは生徒手帳。

それが高速で捲られ、ある一点でピタリと止まる。
そして、クーの顔に会心の笑み。

川*゚ ー゚)「……不純同姓交遊については、校則に何ら記述がありませんね。ならば問題ありません」

从;゚д从「えっと、一体どういう意味で?」

川「*゚ ー゚)「 「貴方の思いを受け入れる、と言う意味ですよ」

状況の、逆転。
不埒な期待を胸に抱き、両腕を上方に掲げたクー。
両手の五指を虎爪の如く撓め、何時でも襲い掛かれる様、重心を前足に乗せている。

从 ゚Д从

対するハインリッヒは鼻血を垂らしながら茫然自失。
クーの言葉の意味を理解したのだろう。

何がどう繋がればその結論に達するかなど、彼女の今の頭では理解出来る筈が無い。
いや、クー以外の誰であろうとも、理解出来る筈が無かった。

川「*゚ ー゚)「 「貴方の胸の高鳴りを無碍にするほど、私は野暮ではありません」

从 ゚Д从

川「*゚ ー゚)「 「大丈夫。許婚となれば、婚前交渉も問題なく行えますから」

从*゚Д从

摺り足でじわじわと迫るクーに対し、ハインリッヒはなす術も無く立ち尽くす。
未知の存在に対し、咄嗟に対応できる人間などそうはいないのだ。

そして、クーがハインリッヒに密着と称しても過言ではない距離に達する。
口から漏れる互いの吐息、その熱を些かも損なう事無く感じる距離。

ハインリッヒの視界を満たすクーの眼は、爛と輝き、如何なる気力も奪い去る。
クーの眼に映るハインリッヒのその表情、無垢極まりなく、故に彼女の情欲を掻き立てた。

クーの両腕が軌跡を描く。
ハインリッヒの華奢な体を抱き締めんとする為に。

川「*゚ ー゚)「 「先程命の営みを目にした事も、兆し、だったのか……も……?」

だが、その両腕はハインリッヒの身体に触れる直前で静止。
クーの視線はハインリッヒから逸れ、その幾許か後方に留まる。

lw´- _-ノv クーちゃん、こんな所にいたのかい。私はてっきり「アブダクション」されたものだと

彼女の視線の先には、足を動かす事無く、滑る様に接近する一人の女性。
その不振極まりない挙動は、中国拳法に存在する滑歩と呼ばれる歩法であった。

功夫を積み重ね滑歩を極めた者は、一夜に万里を駆けると云われている。
真っ赤な嘘である。

川 「゚ -゚)「 「……母様」

从* Д从

」」lw「´- _-ノv「 旦那の冷やかしも済んだ事だし、今から店内を見て回ろうと思うのだけど……

互いに威嚇するように両腕を掲げる二人の女性。
間に挟まれたハインリッヒは時折痙攣するのみで殆ど動かず、その存在はまるで空気。

だが、それもまた仕方ないだろう。
両の鼻腔より迸る血潮は彼女の呼吸を妨げ、結果、思考と感覚を鈍化。

ハインリッヒの虚ろな目は何も映さず、耳に届くのは自身の鼓動のみ。
脳はひたすらにクーの言葉の意味を妄想し続けていた。
つまり、エロい妄想以外出来ない状態だったのだ。

lw´- _-ノ「v」ところでクー

母様と呼ばれた女性がゆるり、と左手をうねらせながら前方へと突き出した。
その切っ先はハインリッヒの髪を撫で、ふわり、となびかせる。

同時に、彼女の右頬が撓み、切れ長の細い目が、右側だけ僅かに開かれる。
人を喰った様な表情、とでも言えばいいのだろうか。

掴み所無く、喜怒哀楽のどれに属するかも理解し難く。
故に、思考を読めぬ表情。

彼女の人間性を表すが如き表情のまま、言葉が漏れる。
口は動いていない。腹話術である。

lw「´- _-ノv9m∑」俺についてこないか?

川*゚ -゚)b∑ 「よろこんで」

クーは勢いよく親指を立ながら誘いに応じる。
その親指の勢い、天を衝くが如く。

尻に尻尾が生えていたならば、千切れんばかりに激しく振られていた事だろう。
彼女はお母さんっ子だったのだ。

川*゚ -゚) 「では、本日の件についてはまた明日にでも。失礼します」

从* p从

深々と頭を下げて立ち去るクーに対して尚、ハインリッヒは動かなかった。
彼女の意識が現実に戻るのは、それより十数分後。
時は既に十時半を回っていた。

ハインリッヒの傍で、揺れる事無く中空に吊り下げられたままの裸電球。
吊るしているのは勿論この道四十年のベテラン、渋沢(56歳)である。
現在連続下着泥棒容疑者として指名手配中の為、台詞は無い。


川*゚ -゚)「母様、今日は命の営みを目にする機会に恵まれました」

「w´- _」-ノv ふふっ、我が娘よ……其れは始まりに過ぎないのだよ 

娘の手を握り返す彼女の名は杉浦シュー。三十六歳子持ち。
結婚した理由は、旦那が如何なる時もご飯を一粒たりとも残さない人だったからである。

~~~

从;゚∀从「ちくしょぉぉぉぉっ!鼻呼吸出来ねえぇぇぇぇっ!」

体の前面を紅に染めたまま、ハインリッヒは一心不乱に駆け昇る。
乙女の本懐、オサレさえも捨てて挑んだセールでの、思わぬ遅れ。
それを一分一秒でも取り戻さんと、彼女はデパート内にて一陣の疾風となる。

無駄な努力と嘲笑う事なかれ。
人は奇跡を願う存在なのだ。

喩えセール会場が、牛さん達に牧草を食い尽くされた牧場の如き様相であったとしてもだ。
諦めて帰ると云う選択肢は存在しない。

ハインリッヒはそれを出来るほど老いてはいない。
正直、精神年齢は十を超えていればいい方だ。

从;゚∀从「頼むから何か残ってろよぉぉぉぉっ!」

故に、奇跡を信じるのだ。
残っていた物がドクダミ的存在であろうと構わない。
何かが残っていて、それを買えたならそれでいい。

ハインリッヒ高岡、彼女は完全に負け犬思考に陥っていた。

从;゚∀从「どわっしゃぁぁぁぁぁい!」

やがて最後の一段を上りきったハインリッヒ。
激戦区であるその場所に辿り着いた彼女が見たものは――

クタバレェェェェッ!>ぷ.......。 ΩΩΩΩΩΩΩΩ<ヒギィィィィィ!

从;゚∀从「……」

――セール会場の前で立ち尽くす人々の垣根だった。




第二闘争ッ!

後編にィィィィィィィィッ!継続ゥ――!!!!!!!!


⌒゚ノハ,「゚Д゚)「⌒「けいぞくー!」

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でも一話の最後見たらすぐ分かる仕様です。

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