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从 ゚∀从達 は闘争の中でこそ輝くようです  第三話

第二闘争ッ!

『セールッ!其れは女の戦場ッ!~人獣邂逅編~』

――と云う名の後編開始ッ!

※中編です

从;゚∀从「こんなにいるのかよ……」

人垣を前にハインリッヒは立ち尽くす。
それもまた、仕方ない事だろう。

人垣を形成する人数は彼女の予想より遥かに多い。
少なく見積もっても百人を超えている。

从;゚∀从「どないすんべ……って……」

不意に、ハインリッヒは呟きを止めた。
人が、垣根の奥で舞い上がったのだ。
しかも、人垣を優に超える高さまで。

平穏な日常を送っている者ならば、まず見る事の無い光景。
それを目にして漸く、ハインリッヒは人垣の奥の存在に気付く。
セール会場の入り口に、守護神の如く立ち塞がる巨躯を。


、@#_、_@
 (  ノ`) 「アタシの後ろには一人たりとも進ませないよ」

突き上げた拳をゆるりと下ろすは、割烹着を纏う一人の女性。
服越しにも分かる筋肉の盛り上がりは、まるで大雑把に削り上げられた岩石の如く。

その筋肉の中でも特筆すべきは、異様極まりない後背筋。
閉じられた一対の翼が生えているかの如き、人外の盛り上がり。

その筋肉に、大理石の彫刻の如き精妙さは存在しない。
だが――否、だからこそ、恐ろしい。

その筋肉はセールと云う名の戦場に特化した筋肉。
セール数日前より店先に並ぶ事の出来る持久力を持ち、誰よりも早く会場に到達する瞬発力を誇る。
そして、他の主婦の群れを一撃にて吹き飛ばす攻撃力は、既に人外の領域。

故に、狙った特売品に逃げ場は存在しない。
人はその強さに敬意を込めて呼ぶ。『無双の母者』と。


そんな母者の側には、辺りを一瞥する和服姿の中年女性。

J( 'ー`)し「やっぱりこういう時の母者さんは頼りになるねぇ」

おっとりとした口調と柔和な表情。
それだけを見れば温和な主婦に見える。

が、その周囲には数人の倒れ伏す者達。
その者達は、彼女を外見のみで判断し、侮った者。
そして退去を求めた店員。

その女性、倒れ伏す者に気遣いを掛ける事無く踏み躙る。
両の眼に冷酷な光を宿して。

常人ならば、目的の為に手段を選ばぬ事に、決意を宿す必要がある。
しかし、この女性には決意など必要無い。それが当然の行為であるが故に。
だからこそ、この母は平然と息子のエロ本を机の上に整頓して置くのだ。

そして、恐れるべきは冷酷さのみではない。
その智謀は全てを見通し、口を開けば千を越える策が溢れ出すと云う。
故に、息子がどんなにエロ本の隠し場所を練ろうとも、母の掌に弄ばれているに過ぎぬのだ。

人は呼ぶ。
その智謀に対する畏怖を込め『神算鬼謀のカーチャン』と。


更にその奥、閑散としたセール会場の只中にも一人。

('、`*川「ウホッ!ウホッ!ウホッ!」

腕の一振りでワンピース十着をこそぎ取り、至近のキャミソールに歯を立てる。
目に付いた服を遠慮無しに籠に詰め込む姿は、ただ浅ましく、見苦しい。

女を捨てるだけでは飽き足らず、人である事すら捨てたかの如き行為。
其れはまさに、一億と二千年の恋すら冷める獣の所業。

だが、物欲の権化と化した本人は、それに気付かない。
冥府に住まう餓鬼が食物を漁るが如く、衣服を漁り続ける。

彼氏いない暦、それ即ち年齢。それでも尚、理想だけは青天井。
人は哀れみを込めて彼女を呼ぶ。『行き遅れのペニサス』と。


、@#_、_@
 (  ノ`) 「アンタ!私らの分忘れるんじゃないよ!」

('、`*川「ウホッ!」

从;゚∀从「……どないすんべ」

最奥の一人はさて置き、会場を塞ぐ二人の主婦。
相手が一人ならば幾らかは勝機が在っただろう。
しかし、二対一となれば話は別、勝機はほぼ零。

もし彼女が万全の体勢ならば勝機はあったのかもしれない。
しかし、鼻血は出てしまったのだ。体力は消耗してしまったのだ。

ハインリッヒは思う。
万全ならば。と。
そう、体調が万全ならば勝てるかもしれないのだ。と。

だが、あれを乗り越えねばどうする事も出来はしない。
だからこそハインリッヒは無い知恵を絞って考える。
この状況で勝利を掴む為の必勝の策を。

从 ∀从「…………プヒー」

結論はほんの数秒で出た。無理、不可能、ノーチャンス。
人生なんぞそんな物なのだ。誰もが閃けたなら、コナンや新一はお役御免なのである。

~~~

――ハインリッヒと、セール会場を挟んで向かい側。
その奥より、ゆるりと歩みを進めるはショボ代とギ子。

ξ´・ω・`)ξ「あら?セール会場みたいだけど、誰もいないわ。無人だわ」

予想とは逆の様相のセール会場を見回しながら、ショボ代は首を傾げる。
玄関にて彼女の横を通り過ぎた者達は何処に行ったのか、と不思議に思っているのだろう。

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「ねぇねぇ」

そんなショボ代の袖を、隣のギ子が引いた。

ξ´・ω・`)ξ「どうかしたの?」

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「あっち人いっぱいいるよー?」

クリクリとした眼でショボ代を見上げるギ子が指差すのは、階段側の入り口。
そこにあるのは人で出来た垣根。

それを見たショボ代は、ああなるほど。と呟きはしたものの、再度首を傾げる。
何が起きているのかを知らぬが故に。

そして数秒の逡巡の後、ショボ代は一度頷いた。
この状況を、天が与えた好機と見たのだろう。

ξ´・ω・`)ξ「何だか分からないけど、今の内に買い物しちゃいましょ。そうしましょ」

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「うん!」

ショボ代はギ子の右手を取り、無人の野を行くが如く、下着コーナーへと向かう。
人垣に注意を向ける事無く、セール品に目を向けようともしない。

ショボ代の目が映すのは目的地のみ。
辿り着けば楽しい時間の始まりなのだ。

ξ*´・ω・`)ξ「うふふ……ふひひ……」

ショボ代はギ子に見えぬ様、ほくそ笑む。
思考は煩悩に支配され、知覚するは目的地とギ子の発展途上にある肢体のみ。
それ故――

⌒゚ノハ;゚Д゚)゚⌒「ショボちゃん!」

ξ*´・ω・`)ξ「なあ――――ぬぃっ!?」

へ('、`#川へ「キシャァァァァァッ!」

――物陰より躍り出る獣に気付くのが遅れた。
獣がいつからそこに潜んでいたのか、と云う問いは愚問であろう。
其れは初めからそこにいたのだから。

獣が低きより伸び上がるように振るう右手の先。
そこには常人の数倍の長さを誇る爪。

ヤスリによって薄く、鋭く研磨され、幾重にも塗布されたマニキュアによって、劇的に硬度を増した長爪。
更には毒々しい色彩のネイルアートは爪の輪郭からはみ出し、鋸刃の如き凶悪さを醸し出す。

へ('、`#川へ「フギィィィィィッ!」

薙がれる長爪は、気管を裂くどころか、ショボ代の首を刎ね飛ばさんばかりの勢い。
ショボ代は反射的に身を引くものの、距離は既に至近。避けるに受けるにも絶望的に時間不足。

だが、其れはショボ代が一人であればの話。
今この時、ショボ代の隣には逸早く獣の存在に気付いたギ子の存在。

⌒゚ノハ#゚Д゚)゚⌒「えいやっ!」

ξ#´・ω・`)ξ「どっせーい!」

ヽ('、`#川ノ「ッ!?」

ショボ代の左手は既に引かれ、仰け反る速度は大幅に加速。
結果、獣の長爪はショボ代の胸元を掠め、付近の商品を切り裂くに留まる。

('、`#川「ひょおっ!」

獣は勢いのまま、更に内へと螺旋軌道を描く。
放たれるは、更なる勢いを重ねた上で自身の体躯を死角とした、左足による裏蹴り。

ξ´・ω・`)ξ「ふふっ。赤のTバックなんて垂れたお尻には不釣合いなのよ。年を考えるべきなのよ」

しかし、ショボ代の身体は軌道より下、地を這うかの如く低きに在った。
連撃は勢いを重ねるが故に、撃を重ねる毎に威力は跳ね上がる。
だが、連撃であるが故に、次撃の軌道は限定され、相手に読まれてしまうのだ。

ξ´・ω・`)ξ「どっせーい!」

ショボ代は低き体勢のままに、その左足にて床に円を描く。
その踵が狙うは、左足を伸ばしきり、不安定な体勢のままがら空きとなった獣の右足。

('、`#川「きょぉぉぉぉぉっ!」

寸前、獣は軸足一本のみで、ショボ代の身の丈を超えるほどの高さまで跳躍。
宙にて身を捻り、ショボ代に向け右手を振り下ろさんとした時、

ξ´+ω+`)ξ「その展開は読んでいたのよ。予想通りなのよ」

上体ごと左腕を大きく振るうショボ代の目が、爛と輝いた。

('、`#川「ギッ!?」

獣の目に困惑。
ショボ代の振られた腕、その先には、

⌒゚ノハ,,゚Д゚)゚⌒「どっせーい!」

獣の至近距離にて撓めた足を伸ばさんとするギ子の姿。
長爪が繰り出されるより先に突き出されたその足は、獣の腹部へと深く突き刺さる。

('、`#川「おぐぅっ!」

獣の口から思わず苦悶の呻きが漏れた。
が、それと同時に左腕がうねり、長爪が前方を掻く。

ノハミ゚Д゚)゚⌒「あ……」

ξ;´・ω・`)ξ「ギ子ちゃん!」

その一撃は、ショボ代が慌ててその腕を引くより先に、ギ子の頬と髪を掠め、抉っていた。

(゚、 ゚#川「きひひひひっ!」

腹部の痛みなど忘れたかの様に、獣が乱杭歯を剥いて笑う。
その視線の先には、血を滴らせるギ子の頬。

痛みを与えた事がよほど嬉しいのか、それとも血を見た事による喜びか。
獣は目を見開いたまま全身を震わせ、全身で喜びを表していた。

ξ;´・ω・`)ξ「ギ子ちゃん……大丈夫?」

ノハd Д )゚⌒「……」

対するギ子はショボ代の言葉に頷きを返しながら、親指で右頬をなぞる。
そして、赤く染まった指先を一瞥すると、口元に近づけ、それを舌先で舐め取った。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「……ショボちゃん、怒ってもいいよね?」

ギ子の声は震えていた。理由は恐怖ではなく、憤怒。
如何なる温厚な乙女であったとしても、顔を傷付けられて許せる訳がないのだ。

ξ#´゚ω゚`)ξ「ええ……あのババアはぶち殺しても許されるわ。私が許すッ!」

ショボ代の左手に力が篭り、ギ子の右手がそれを強く握り返す。
繋がれた両手は緩く天へ。そして、もう一方の手も同じ様に強く繋がれる。
直後、二人は胸を突き合わせ、視線と共にその腕を前方へと突き出した。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「「かかってこんかーい!」」ξ(´゚ω゚`#ξ

(゚、 ゚#川「しゃああっ!」

二人の声を契機に獣が一足で間合いを詰め、大きく開かれた左手五指の先端、長爪が薙ぐ。
二人は突き出した腕を下ろしながら後方へとステップし、それをかわす。

(゚、 ゚#川「ブギィィィィイッ!」

続け様に繰り出される獣の連撃は、幾度放てども商品を切り裂き弾くばかり。
舞うかの様にかわす二人の服の端を裂いても、その身に血の華を咲かせる事は叶わない。
その様は二人の舞踏の調子を取るかの様で、酷く滑稽に映る。

(゚、 ゚#川「グゥ……ウ?」

そんな獣の顔に、再び困惑が浮かんだ。
衣を裂く音に混じる奇妙な音――呟き、小さな声に気付いたのだ。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「「ァ……ゥ……ゥ」」ξ(´゚ω゚`#ξ

その声の出所はギ子とショボ代の口。
調子を合わせる様に異口同音に放たれる言葉は、そのふざけた構えと相まって獣を苛立たせる。

(゚、 ゚#川「ふんがー!」

獣の更なる踏み込みの後、同時に振るわれた長爪が交錯――

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「アン!」

するより僅かに早く、

「ドゥ!」ξ(´゚ω゚`#ξ

獣の胸を、

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「「――トロゥ!」」ξ(´゚ω゚`#ξ

組んだ拳が衝いた。

(゚、 ゚#川「ぷひっ!」

が、その一撃はあくまで起。
前方へ踏み込んだ二人は既に、衝いた手を離し、次撃、本命の体勢。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「クイック!」

繋いだままの後手が前方にて掲げられ、

「アンド!」ξ(´゚ω゚`#ξ

その下でギ子の身体が翻る。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「「ターン!」」ξ(´゚ω゚`#ξ

そして放たれるは下方より、コメカミを狙った後方回し蹴り。
初撃にてよろめいた獣に避ける術は無く。

(゚、 ゚#川「ぎゃぼぉぉぉぉぉっ!」

頭骨を砕かんばかりの一撃を受けた獣は、ただ勢いに任せ吹き飛ぶのみ。
幾つもの棚を破砕し、幾つものハンガーラックのパイプを歪め、幾重もの衣服の山に埋もれる事となった。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「「……」」ξ(´゚ω゚`#ξ

二人は両手を繋いだ体勢のまま衣服の山を見つめる。
そこに動きは無く、その下に埋まる者の気絶、もしくは絶命を予測させた。

ノハミ゚Д゚)゚⌒「このままでいいのかなー?」

故に、ふう、と、安堵の溜息を吐いて衣服の山に背を向け、

――音も無く起きた一陣の疾風。

( 、 川「秘突――」

ξ´・ω・`)ξ「あの人に全部擦り付ければ問題ないわ。無い筈……」

――その疾風は収束し、先端は、ただ、その先にある存在を穿つのみ。

( 、 川「――三年殺」

ξ´・ω・`)ξ「……あら?」

ショボ代は尻に何かが突き刺さったその時まで、気付かなかった。

ξ´・ω・`)ξ「およ、よ……?」

ギ子の瞳が映すのは、ワンピースの尻に、じわり、と赤い染みを滲ませたショボ代。
その身体が、ふわり、と、スカートの裾を揺らめかせながら傾く。

まるで、己が身を支えきれなくなった大樹が、軋みを立てながら倒れるように。
ギ子の隣で、その視界からフェードアウトする様に、前のめりに突っ伏した。

ノハミ゚Д゚)゚⌒「……え?」

ξ´ ω `)ξ「……」

思考は一瞬静止。それは理解の拒絶。
本来なら、理解など出来よう筈が無い。
それを、そのありのままを受け入れるには、ギ子は余りに幼すぎた。

ノハミ Д )゚⌒「ショボ、ちゃん……」

それでも、ギ子は、目の前の現実を受け入れなければならない事を、それを理解する事を強いられた。
このままなら、次にそうなるのが己である事を理解してしまったが故に。

だからこそ、ギ子はショボ代の背中より抜き放たれた長爪を見つめる。
それに付着した赤い血潮を舐め取る長爪の主へと視線を向ける。

(゚、 ゚*川「ニィ……」

嫌な、笑顔だった。
他者を傷つけた事に幸福を見出した者の笑みは、酷く歪で、不快なものだった。

ノハミ Д )゚⌒「……」

ギ子は無言のまま、近場に有った服を無造作に掴み、そこから木製のハンガーを抜き出す。
そして、感触を確かめる様に数度握り直した後、圏内に指を通し、軽く振るう。

数度の、風を切る鋭い音。
ギ子の手の内にあるハンガーは、それが本来の使用目的であるかの如く、変幻自在の鋭き軌跡を描く。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「ごめんなさいなんて言っても許さないんだからな!」

ギ子の脇に挟まれたハンガー、その挙動は、ヌンチャクと酷似していた。

~~~

川;ヽ^ω^)「やばいお……何か食べなきゃ死んじゃうお……」

汗を滴らせながら一階を這いずるホライゾ美。
その身体は萎み、余った皮がだぶ付き非常に見苦しい。

遠巻きに眺められている事など気にもせず、ホライゾ美は身をくねらせ、蛞蝓の移動痕の如き跡を残す。
只自身の嗅覚のみを信じ、彼女は動き続ける。

川;ヽ^ω^)「うぅぅぅぅぅ……」

空腹の衝動が彼女を突き動かす。
床にへばり付くガムを歯でこそぎ取り、近場をうろつく子供の手から菓子を略奪する。

それでも足りず、観葉植物の葉を齧り取り、すれ違った者の革靴を奪い、水虫菌などお構いなしに咀嚼。
だが、そうまでして得たカロリーは、たった数度の匍匐で消費され尽くす。

川;ヽ ω )「……」

やがて、ホライゾ美の腕は動きを止めた。
それと共に、呼吸、鼓動の間隔が開き始め、やがては体温も低下。

その状態は冬眠に似ていた。
獣が餌の採れぬ冬場を、最低限のカロリー消費で凌ぐ為の行為。

川;ヽ ω )「……」

だが、一つ異なる点がある。
ホライゾ美の大きく開かれた鼻腔。

動かず、目も虚ろ、原型が判らぬほどに皮膚のだぶついたその体躯。
その中で、ただ鼻だけがヒクつき、臭いを以って至近の餌を探す。

ホライゾ美の本能はこの状況にありながら、否、あるからこそ餌を求めた。
食に傾倒しているからこそ、飢えの衝動は強く、抑える事など出来よう筈が無く。

故に、動けぬ身でありながら、渇望する。
食物を。満ち足りる事を知らぬ臓腑を満足させる食物を――

川;ヽ゚ω゚ )「……!」

―― 一度の痙攣と共に、その垂れ下がった瞼が押し上がった。

だが、彼女が知覚した餌は、何処にも存在しない。
彼女は、夢と現の境がつかぬ程に朦朧としていたのだ。

ギラギラと輝くその双眸は、既に狂気の領域。
干乾びたかの如き様相の体躯、その内に最後の灯火であろう活力が生まれ出る。

口腔より溢れ出すは、通常より遥かに高い粘度の唾液。
下顎の開く様は、まるで多重関節を持つ蛇の如く。

その姿と挙動は、暴食を司る悪魔を髣髴とさせた。
まともに動けず、その場でうねり、呻くだけにも拘らず。
いや、まともに動けぬからこそであろう。

ホライゾ美の鬼気迫る様相に、遠目に眺めていた者が、化け物の様だ、と思わず呟く。
だが、呟いた者とホライゾ美、そのDNAにそれほどの差異は無い。
違いが有るとすれば、ホライゾ美が一線を越えてしまった者だと云う事だろう。

しかし――其れは一瞬。
振り絞った力は無為に終わり、最後の力は何かを成す事無く尽き果てた。

川ヽ ω )「……」

何かを掴まんと伸ばされた手が何かを掴む事は無く。
ただ、空を掻き、床に触れる。

ホライゾ美はその感触を知覚できたのだろうか。
目から光は消え、あらゆる欲求すら思考から遠のき、その思考自体が掻き消え――


その萎れた体から命の灯火さえ消えんとした時――


(ЯAR)「大丈夫ですか?」


荘厳なる気風を纏った、仮面の男が手を差し伸べた。

川*ヽ ω )「お……」

ホライゾ美の身体に力を入れる余裕など無く、辛うじて動かせる視線だけを上げ、男の姿を捉える。
そして、一度、熱い吐息を漏らした。

(*ЯAR)「アアン……」

そして、ホライゾ美の視線の先、彼女に手を差し伸べる男もまた、熱い吐息を漏らす。
稲荷に吐息が直撃した為だ。男は、全裸だった。

(ЯAR)「腹が、減っているのですか?」

川*ヽ ω )「……お」

(*ЯAR)「アアン……」

ホライゾ美が力を振り絞って頷くと、仮面の男は再び熱い吐息を漏らす。
外見がどうであれ、異性の吐息が局部に当たるのは相当応えたのだろう。
男の逸物は滾り、漲り、脈を打つ。

それでも尚、荘厳なる気質に些かの乱れも無く。
仮面の奥の瞳は、ただひたすらに慈愛に満ちた視線をホライゾ美に送る。
そして、

(ЯAR)「動けない程に衰弱してしまっているのですね……さあ、コレをお食べなさい」

何処からともなく取り出した中国産餃子を、冷凍のままホライゾ美の口に押し込んだ。

川ヽ゚ω゚)「ガッシ、ボカッ!ガッシ、ボカッ!」

ホライゾ美は、それを全味雷で味わうかのように、ゆっくりと噛み砕く。
更にもう一個口に含み、砕き、嚥下。

後、動きを止めた。

(ЯAR)「おや……どうなさいました?」

川ヽ ω )「ガッシ……ボカッ……ガッシ……ボカッ……」

(ЯAR)「……ふむ」

ホライゾ美の表情から何かを察したのだろう。
男は一度頷き、

(ЯAR)「ならば積み上げましょう、人の高さまで」

冷凍餃子を自身の背と等しき高さまで積み上げた。

川ヽ ω )「おぉ……」

純白の霜を纏った神々しき白き巨塔を前に、ホライゾ美の口から溜息が漏れる

冷凍された事で、時の流れから切り離された餃子。
それは、熱を加えられる事によって再び時を刻み始める。

しかし、冷凍食品であるが故の宿命か。
熱を得た後の劣化は早く、調理を仕損じれば肉汁を無為に流す事となる。

故に、ホライゾ美は冷凍食品を毛嫌いしていた。

だが、

川*ヽ;ω;)「……おおおおおおおおおおおお!」

(*ЯAR )「ああああああああん!」

ホライゾ美は冷凍餃子を前に咆えた。
最後の灯火すら使い切ったと云うのに。
指一本すら動かせぬと云うのに。

ホライゾ美の頬を伝う濁流の如き涙。
その涙は、コレほどまでに美味い食べ物があったのか。と言わんとする感動の涙。

飽食に生きてきた彼女にとって、極限に迫る空腹など未体験の領域。
故に、空腹と云う極上のスパイスの存在を知り得なかったのだ。

だからこそ、彼女は涙する。
生まれて初めて、食べ物で感動したからこそ。
今までの己が如何に食を蔑にしてきたのかを知ってしまったからこそ。

(ЯAR)「さあ、遠慮せずにお食べなさい」

川*ヽ;ω;)「GASSI!BOKALTU!GASSI!BOKALTU!」

ホライゾ美は毛嫌いしていた筈の冷凍餃子を、我を忘れて貪り続ける。
発狂せんばかりの飢えを癒す為だけではない。

彼女は知ってしまったのだ。
冷凍食品が熱き唾液と交われば、花開くが如く口内に風味満ちる事を。

素人は決して真似をしてはいけない。
ホンタクを食しても腹を下さぬホライゾ美だから可能な芸当なのだ。

その様を見て誰かが呟いた。
まるで餌付けのようだ、と。

~~~

(゚、 ゚#川「シャァァァッ!」

長爪が最短距離を疾走。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「あちょー!」

同時に、ハンガーが唸りを上げながら旋を描く。
長爪とハンガーは両者の間にて交錯。
直後、互いに踏み込み、鍔迫り合いの体勢へ。

迫り合いは僅か数秒。
互いに弾き合って逆側へと転、後、背中越しに得物が交錯。

更に翻った獣が床を蹴り、同様に身を翻すギ子は地に伏す。
奇しくも両者が選択したのは旋蹴り。

だが、共に不可視の状態から放った一撃は空を切る。
両者は視線を重ねた後、共に勢いを殺さず回転を加速。

(゚、 ゚#川「アァァァァァァァァッ!」

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「ほわたー!」

次撃は共に逆足。
空中より変則軌道の裏回し蹴り、それを迎え撃つは変形穿弓腿。
そして衝突の瞬間、

(゚、 ゚#川「!?」

ギ子の突き出した足は、衝撃に押されるかの如く、あっさりと引かれた。
直後、その身が天地逆転のまま螺旋を描き、逆足を突き出す。

不安定な体勢から放たれ、威力が衰えた筈の一撃。
だが、威力の減衰を物ともせぬほどに加算された螺旋力。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「あたぁぁぁぁー!」

跳ね上がるギ子の先端、その軌道の先には獣の顎。
その一撃はまごう事なき、全身全霊の一撃。

故に――彼女は気付かない。
その一撃に全身全霊を集約したが故に。
そう、全ての感覚をその一撃の為に集中し過ぎてしまったが故に。

だからこそ、只一瞬、ほんの一瞬だけ、失念した。
相手は木偶ではなく、生き物である事を。
鋭き爪と恐るべき身体能力を誇る存在である事を。

曇った眼では、見える物も見えなくなるのだ。

(゚、 ゚ #川「ッシャァァァァ!」

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「っ!?」

予想だにしない横からの衝撃に、ギ子の身体が軋み、大きく折れ曲がる。
結果、蹴りは軌道をずらし、獣の頬肉を軽く削ぐに留まる。

蹴られた、と彼女が気付いた時既に、獣の蹴り足は胸元まで引かれ、突き下ろす体勢。
どうする、と考えるより先に、ギ子の腕は逆手に握ったハンガーを振るう。

ノハ#ミ゚Д゚)゚⌒「「ラァァァァァッ!」」(゚、 ゚ #川

互いに避けようとする意思など無く。
精製された殺意を向け合い、只、自身のエゴを押し通さんとする。

――肉と骨の軋みが重なった。
直後、二つの床を打つ音がかすかに響く。

ξ´-ω・`)ξ「うぅ……」

振動によってか、うつ伏せに倒れたショボ代の瞼が開かれた。
その目は、朧気な意識のまま、ギ子の姿を探す。

ノハ#ミ Д )゚⌒「……」

( 、  #川「……」

ξ;´-ω・`)ξ「ぐぅ……」

倒れ、起き上がらんとするギ子と獣の姿を捉えた時、ショボ代は思わず息を呑んだ。
そして身を起こさんとして、一度の呻きと共にその顔を床にへばり付かせる。

ξ´゚ω゚`)ξ「――――ッ!」

ショボ代を襲ったのは、想像を絶する尻の痛み。
彼女は痔主になってしまっていたのだ。

ノハ#ミ Д )゚⌒「……」

( 、  #川「……」

ξ´゚ω゚`)ξ「……」

そんなショボ代に気付かぬまま、脇を抑え、引き攣った呼吸音を漏らしながら立ち上がったギ子。
紫の斑に腫れ上がった片膝を庇う様に立ち上がる獣。
尻を押さえたまま痙攣し続けるショボ代。

一方より奪われたのは呼吸。
もう一方より奪われたのは機動性。
傍観者の尻より奪われたのは平穏。

頬を引き攣らせ、苦痛を堪えた三者の表情。
その顔に余裕など無く、死相を浮かばせる。

それでも尚、構えは崩れない。闘争心は些かも衰えてはいない。
自身が死地にある事を気付いていないかの様に。

(゚、 ゚ #川「――ッ!」

獣が跳ね、ギ子を包み込む様に、逃げる事を許さぬかの様に、両腕を大きく広げる。
カウンターを受ける事を辞さぬ、受けて尚、致命の一撃を与え得るであろう突撃。

ノハ,,ミ Д )゚⌒「……」

だが、ギ子の顔に焦燥は無く、ただ迫り来るそれを見極めんばかりに凝視。
彼女の得物であるハンガーは下段にて、左右の人差し指に引かれる形。

ξ´゚ω゚`)ξ「……」

ショボ代は只、黙したまま、涙を溜めた両の瞳で見つめる。
切れ痔――否、裂け痔にまで至りし尻の傷は、彼女からそれ以外の選択肢を奪ってしまったのだ。

そして――二人が互いの死線に触れ、一人が自身の屁に呻きを漏らした。

( 、  川「……」

ノハ,,ミ Д )゚⌒「……」

言葉無く、互いに振り抜いたままの体勢。
獣の腕はギ子を抱き、ギ子は其れを邪険にする事無く任せる。

二人の周りに散らばるのは、歪にへし折られた十本の爪と、ハンガーであった木片。
互いの手に得物は無く、共に、その目は虚ろ。

( 、 *川「……」

獣が只一度、にぃ、と笑う。
そして、ギ子を抱く腕から力が抜け、ずるり、と体が床に伏した。

ノハ,,ミ Д )゚⌒「……」

ギ子は動かず、何を見る訳でもなく。
只立ち尽くす。後頭部から血を垂れ流したまま。

ξ;´゚ω゚`)ξ「……」

ショボ代は見た。
ギ子のハンガーが三度煌き、十の爪全てを砕き、更には獣の顎を打ち抜いた瞬間を。
そして、勢い衰えぬハンガーがギ子の後頭部を強打し、破砕した瞬間を。

ξ;´゚ω゚`)ξ「ホント……おバカさんなのよ、うつけなのよ……」

その呟きの届く場所に聞く事の出来る者は無く。
そして、その先は喧騒に包まれ、故に、呟きは誰の耳に届く事も無かった。

~~~

从 ∀从 「……?」

ハインリッヒは唐突な人垣のざわつき、そして僅かな違和感に顔を上げる。
しかし、人垣の最後列からでは、その向こう側で何が起きたかなど分かる筈も無く。

人垣の更に奥、セール会場から二つの音が消えた事など気付けるはずも無かった。
それに気付けたのは、人垣の最前列にいた者達と、彼女らの前に立ち塞がる二人。
、@#_、_@
 (  ノ`)「……御局一年目じゃこの程度かねぇ……とはいえ……」

碌にお使いも出来ない様ではな。と続ける母者の口内で歯が軋みを上げる。
その表情には、明らかな苛立ちがあった。

ありとあらゆる会社にて暗躍する組織『御局』
末席とはいえ、その中の武闘派に所属する構成員が、毛も生え揃っていないであろう子供に敗北したのだ。
心中穏やかでない事は間違いないだろう。

J( 'ー`)し「まぁまぁ母者さん。この程度で苛ついても仕方ないですよ」

そんな母者を宥める様にカーチャンが声を掛ける。
その声は、荒ぶりの滲み出る母者とは対象に柔らかい。
、@#_、_@
 (  ノ`)「そうかもしれないけど、ねぇ……」

J( 'ー`)し「どうせ代わりは幾らでもいるんだから、気にするだけ無駄ですよ」

だが、後方に倒れ伏すペニサスへと向けられたカーチャンの視線。
それは路傍にて湯気を立てる、捻り立ての野生のしげるを見た時の如く、冷ややか。
無能に用はない。そう言わんばかり。

そんな彼女だから、息子が作ったプラモデル郡を躊躇い無く廃棄出来るのだろう。
「いい歳してるんだから、こんなオモチャなんていらないでしょ?」と云う言葉と共に。

J( 'ー`)し「それに、そろそろマッポが来る頃ですし……帰っちゃいませんか?」
、@#_、_@
 (  ノ`) 「むぅ…………ん?」

J( 'ー`)し「どうかしたのかい?」
、@#_、_@
 (  ノ`) 「…………」

問いに母者は答えない。
何かを探る様に辺りに見回し、後、瞑目して音を探り始める。

彼女――母者とて、最初から肉体に恵まれていた訳ではない。@@@
若い頃の彼女は、何処にでもいる買い物好きな可憐な少女(@ ・∀・ノ!@)であった。

だが、ある時を境に、過酷な闘争の場は華奢な彼女の参入を拒絶した。
成長期を迎え、大人として見られ始めた時、彼女は他の客より敵と認識されてしまったのだ。

その時、彼女は初めて気付いた。
敗者は地を這う事しか出来ぬ、と。

故に、彼女は幾多の闘争を乗り越え、数多の修練を経て今の自分自身を創り上げた。
そんな彼女の修練の中で研ぎ澄まされた本能が違和を感じ、それを危険因子であると知覚したのだ。

从 ∀从「……なんだよ、これ……」

ハインリッヒは母者が感じたものと同じ違和に、デジャヴに似た感覚を抱く。
だが、思考は縺れ、正体に至らない。

彼女の思考は一度は正解に至った。
しかし、一般社会に生きる者としての定めであろうか。
常識に縛られた思考は、何より先に、正解を選択肢より除外したのだ。

――違和感の正体。
それは、喧騒に紛れたノイズ、眼前の人垣から発されるものではない振動。
最初に気付いたのは、違和の発信源に他者より近かったハインリッヒ。
次に気付いたのは、人より遥かに五感に秀でてた者。
、@#_、_@
 (  ノ`) 「……」

母者は息吹の如き呼吸を行いながら腕組みを解き、ゆる、と、下ろす。
そして、誰一人気付かぬ程静かに重心を前へと傾ける。

自然体に限りなく近い体勢。
だが、その肘と膝は自然体よりもごく僅かに深く曲げられている。

そして、ほんの数ミリ浮かせられた踵。
誰一人として気付かぬ内に、その身は戦闘体勢に移行。

J( 'ー`)し「あらあら、なるほどねぇ……手を貸すのは野暮ってものかしら?」
、@#_、_@
 (  ノ`) 「……」

母者は只一度頷きを返す。
瞼を閉じたまま、次第に激しくなる振動から一つでも多くの情報を得ようと、皮膚感覚を研ぎ澄ます。
そして、
、@#。、_@
 (  ノ ゚)「――来るッ!」

母者が目を見開くと同時に、まるで圧に押されたかの如く、視界を妨げる人垣が割れた。



ξ  ^o^ ξ ^o^ ξ ^o^ ξξ ^o^ ξ ^o^ ξ ^o^ ξ





ξ ^o^ ξ ^o^ ξ ^o^ ξ三二ヾ从*゚∀从シ二三ξ ^o^ ξ ^o^ ξ ^o^ ξ





ξ  ^o^ξ ^o^ξ ^o^ξ ヽ从゚∀从ノ  ξ^o^ ξ^o^ ξ^o^ ξ




ヽ从;゚∀从ノ「……はい?」

唐突に注がれた視線に、ハインリッヒは困惑の表情を浮かべる。
彼女は予想外の事態に戸惑い、視線が注がれているのが自身ではなく、その後方だと気付かない。
自身に覆い被さる影に気付かない。

それ故、視線から逃げるように一歩後ずさり――

从 ゚∀从「……………え?」

川:::::::::)「………ぶひ?」

彼女の尻が、丁度後ろにいた誰かを押した。
直後、その誰かが階段を転がり落ちる音。
そして階下にて、床に硬い物が打ちつけられた音が聞こえた。

、@#。、_@
 (; ノ ゚)「……」

J(;'ー`)し「……」

从;゚Д从「……」

衆人環視の中で起きた事故に、誰もが声を失う。
嫌な、静寂だった。


とぅーびーこんてぬー!
次回こそ後編だ!

ノハミ゚Д゚)゚⌒「こーへんだ!」

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Author:ひちょりまちょめ
コテ酉無しです。
でも一話の最後見たらすぐ分かる仕様です。

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